第七話:峠のテケテケ

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 とてもじゃないけど、恐くて身動きなんか取れないし、そのまま車の上で頭抱えるようにして耐えていたら、十五分くらいは過ぎてたかな……ちょっと定かではないんですけど、カーブの向こうから車のエンジン音が聞こえてきて、ライトの明かりが射したんですよ。  人が来た! と思って、カーブの先から車が姿みせたと同時に、がむしゃらに両手を振って助けを求めたんです。  車の運転手もすぐ僕に気づいて減速しながら窓を開けて、どうしたんだって声かけてくれたんで、下にいる奴に襲われそうになってるって訴えたんですけど、その人、不思議そうに周りをキョロキョロしてから誰もいないぞって言うんですね。  それで僕も、え? ってなりながら車の周囲を確かめたんですけど、上半身の男、いつの間にか消えていなくなってたんです。  恐いから、車の下に誰か隠れてないかって頼んで確認してもらっても何もいなくて、結局僕が変な奴扱いされてしまったんですけどね。  その後は僕もすぐに車へ乗り込んで、急いで峠を下りました。
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