第三章 快楽を求め続ける体

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休日のある日、私は部屋で宿題をしていた。 部屋のドアがノックされたので「はい」と返事をした。 「琴ちゃん、入るよ~」 「あ、玲さん。こんにちは」 顔を覗かせたのは宝来家の台所を預かる料理長の沢崎玲児(さわざきれいじ)さんだった。 「勉強ご苦労様。ねぇ、丁度おやつの時間だし休憩しない?」 「あっ、もしかして前に云っていた」 「そう、ミルフィーユ作って来たよ」 「わぁ!ありがとうございます、玲さん」 いつも美味しい食事を作ってくれている玲さんは二年前までパリの三ツ星レストランで働いていたけれど今は宝来家の専属料理人だった。 玲さんは一回り歳上の男性なのに最初から妙な気易さがあって、すぐに打ち解けてしまい「琴ちゃん」「玲さん」と呼び合っていた。 「んっ、美味しい!」 「そうでしょう?琴ちゃん、苺が好きだって云ってたからナポレオン・パイにしたんだ」 「このミルフィーユは冷たいんですね」 「あぁ、そうだね。少し時期外れかな?」 「いえ、温かい紅茶とすごく合って美味しいです」 「よかった。琴ちゃんの其の笑顔が見たかったんだ」 そう云いつつ、玲さんの親指が私の口の端にそっと触れた。 「あ」 「クリーム。ついていた」 親指ですくったクリームを玲さんはペロッと舌で舐め取った。
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