庭師見習い

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庭師見習い

 手入れが入った木、装飾が施してある噴水、騎士や女神の石像、綺麗な花壇。 「どうでしょうか?」 「うむ、流石王国随一の庭師だ。高い金を払ったかいがある。」 「お褒め頂いてありがとうございます。」  ここはとある貴族の庭園、僕の師匠であり父親である『ウィルス・ラダム』が手掛けた庭だ。  僕の父は『トランダル王国』では名が知れた庭師で、貴族や王族の屋敷の庭園を数多く手掛けている。  我がラダム家は由緒正しき庭師の一族だ。  僕『セイル・ラダム』も父の元で現在修業中だ。 「セイル、後片付けは終わったか?」 「はい、師匠!」 「よし、帰るぞ。」  僕達は貴族の家を後にした。 「・・・・・・今回の仕事は50点だったな。要求のセンスが酷すぎる。」 「父さん、相手は貴族なんだから。」 「所詮はな、俺達の仕事は貴族の道楽なんだよ・・・・・・。」  貴族の家を離れると同時に父さんの本音が吹き出した。 「俺も親父みたいに頑固一徹になりたかったよ。今みたいに貴族の顔色を伺いながらやっていたら良い仕事なんて出来る訳が無い。」  僕の祖父『リアヌ・ラダム』は名工と言われる職人気質の庭師で、依頼者が100%満足出来る庭を作る人だった。  現在は隠居生活をしていて別宅で庭いじりに精を出している。 「親父のとこにも久しぶりに顔を出さないといけないな。お前の事も相談しないといけないしな。」 「僕の事?」 「あぁ、お前もそろそろ独り立ちしないといけないからな。」  そんな話をしながら僕達は家路を歩いていた。 「お父さん! お兄ちゃん!」  家の前で妹の『マリアナ』が待っていた。 「マリアナ、どうしたんだ? 外で待ってるなんて。」 「お父さん・・・・・・、今お爺ちゃんの屋敷の人から連絡があってね・・・・・・、お爺ちゃん、亡くなった、て。」  涙目で泣きそうな声で言った言葉に僕達に衝撃が走った。     
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