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目深に被ったフードから覗く灰掛かった黒の前髪のすぐ下に、褐色を通り越しほとんど金色の目が在った。
月の光の色、そのものだった――。
この部屋の主は悠然と、お気に入りの皮張りの椅子へと腰を下ろしたままでいる。
数え切れない引っ越しの度毎にわざわざ運ばせている家具はこれだけだった。
イルゼグリムは青の瞳で宮田を見上げた。
北海の氷を思わせる透き通った、冷たい色だった。
そして言った。
「ちょうどよかった。今、『客』が帰ったばかりだ。階段ですれ違わなかったか?」
「三階ですれ違った。七階まで上って来るモノ好きなヤツに」
宮田が思い返すに、見るからにくたびれた五十がらみの男だった。
自分には目もくれずに、残り二階分の階段を降りていった。
ただ、黙もくと。
吐き捨てるようにしてイルゼグリムへと答える。
それから、着ていた黒のコートのボタンへと指を掛けた。
薄手だったが丈は長く、フードまでもが付いている。
もしかするとレインコートなのかもしれないが、宮田にとってはどうでもよかった。
体をすっかりと隠せるから、――条件を満たしているから着ている、ただそれだけだった。
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