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銃声……。
まさか、勇樹君……。
大丈夫だよね……。
私は、院内に響いた銃声が気になり、意識が戻らない班長をこの場に残し、銃を両手に持ち、勇樹君が走っていた方向へと向かって廊下を歩きだす。
廊下を進み、右側にある廊下に視点が行く。途中から中央に引かれている深紅のライン。
深紅のラインの所まで、一気に駆け寄る。
そのラインは人間の血で引かれていた。
既に黒ずんでいる箇所もある。大きい筆で、血を墨のように使って引かれた感じのラインに沿って、銃を下に向けて歩いていく。
ラインはT字路で、左側に曲がっていく。
左側に曲がり、銃を構える。
誰もいない……。
ラインは一メートルくらいの所で途切れている。
フェイクか!
私は振り返り、銃を構える。
誰もいない……。
もしかしたら、このラインは私をここにおびき寄せるため。
成美は勇樹君を殺害して、反対側の方へと逃げた。
このラインは自分が逃げる時間を作るための物……。
手の込んだ事を!
私は銃を下ろした。
「目が悪いのかな~。美雪ちゃん」
背後から響く、明るくも性悪な声に驚き振り向く。
成美!
そう感じ取った瞬間、響く二発の銃声。
弾丸が私の両太ももを打ち抜く。
骨を砕かれ、私は崩れ落ちるように倒れ込む。
成美は一気に距離を詰め、私の後ろ髪を引っ張り、私を仰け反らせて、口の中に何か光る物を突っ込んだ。
喉の奥に激しい痛みが走った瞬間、生命を司る物が立ち切られ、硬い物が首筋から飛び出した感覚が脳に伝わった時、自分の時間が止まったのを感じた……。
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