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私は、成美に繋がる情報を求めて、街の繁華街を一人で歩く。運よく巡り逢えたら、一気に勝負をつける。
駄目か……。
こんな気持ちでいては、殺気を感じ取られてしまう……。
成美の目撃情報を求めて、街中を歩き続けたが、空振りに終わった。
そんな時、私のスマフォが鳴り響く。
表示は非通知となっていたが、構わずスマフォに出る。
「美織ちゃん。久振り~。元気かな~」
電話の声は成美からだった。探す手間が省けたわ。
「久しぶりね。貴方から連絡を貰えるなんて思ってもみなかったわ」
「え~。私とお話をしたいって、言ったのは美織ちゃんの方だよ~」
「そうだったわね。けど、電話じゃなくて、直接会ってお話がしたいと言った筈よ」
「じゃ~。会おうよ。私が指示した所に一人で来ること。出来るかな~」
「私は一人よ。私が一人なのは、貴方が一番良く知っていると思うけど」
「そうなんだ~。それじゃ~。A公園に来てよ。中央に小さい噴水があるから、そこで待ってるね~」
スマフォは切れた。私はA公園に向かう。ここから歩いて、十分くらいのところだ。
A公園には問題なく到着した。中央の小さい噴水の前に待つ。スマフォが鳴る。
「美織ちゃん。ごめんね~。気分が変わった~。B公園の池の所にへんこう~」
スマフォは切れた。
ここは成美の指示に従うことにする。私は早速、B公園へと向かう。そこも、ここから歩いて十分もかからない。
奇跡的に出来た成美との接点、このチャンスを逃す訳にはいかない。
これが成美の気紛れだとしたら、尚更だ。
B公園にも問題なく到着。B公園の池の所で成美を待つ。
またしても、スマフォが鳴る。
「美織ちゃん。やっぱりC公園にしよう~。そこの方が落ち着くから~。西側にある四阿で待ってるね~」
「成美さん。どうしたのかな。私は一人よ。私をからかって何が楽しいのかな」
「成美ちゃんでいいよ~。美織ちゃん。言う事を聞いてくれないなら~。お話はこれで終わりだよ~」
「待って!分かったわ。C公園に向かうわ」
そう答えたら、スマフォは切れた。選択肢は無いようだ。
私はC公園へと向かった。西側の四阿の長椅子に座り、一人で成美を待つ。この公園は他の公園と比べると、規模は小さく、人も少ない。
スマフォが鳴る。
妹からのメールだった……。
内容は特に急いで対応するほどの物ではなかった。『今は忙しいから、また後で』と素気なく回答する。
「お姉さん」
不意に女の子に話しかけられ、驚き女の子の方を向く。
私のリアクションに女の子も驚いてしまったようだ。表情が少し怯えている。
「あの……これ……。お姉さんに渡すように頼まれた」
女の子が震えながらも、私に茶色の封筒を手渡す。
「ありがとう。どんな人に頼まれたのかな」
「とても綺麗なお姉さん」
そう言って女の子は私の前からいなくなった。今の私は警察官ではないから、彼女を拘束することは出来ない。
私は女の子から預かった封筒を開け、中に入っている物を確認する。
中には地図が入っていた。地図には、赤い丸でポイントがしてある。ここに来いと言う事なのだろうか。
手紙には、『ここで待ってるよ~』の一言。
どこまで人をバカすれば気が済むのだろうか。成美への怒りがふつふつと湧きあがる。
しかも、地図に指定された場所までに行くには車が必要だ。
封筒の中を再度確認する。自動車の鍵が入っていた。
私は周辺を見渡す。
そう言えば……。
私が四阿に来た時から、ずっと止まっている黒い軽自動車があるけど……。
そのまさかだった。
私はその黒い軽自動車に乗り、成美が指定する場所へと向かった。
今度こそ、成美との勝負に蹴りをつける。
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