終わりし者

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終わりし者

   僕はクレイジージョー。この前、成美ちゃんと一緒に刑事を二人、救済して上げたから、少しは大人しくしていようと思ったけど……。  結局、やってしまった。仕方ないだろう。僕にとって、救済活動は全てなのだから。  けどね……。  最近、嫌な空気を背中に感じる。分かりやすく言ってしまえば、誰かに監視をされ続けている感じだね。  最初のうちは余り気にならなかったけど、今は誰かがずっと貼りついているように感じる。  警察に目を付けられていることは分かっているから、常に用心はしているけどね。  ただ、僕を付け回している奴らに、警察官と言う感じがしない。どちらかと言うと、僕や成美ちゃんに近い奴らのような感覚を覚える。  そんな嫌な空気を感じ取りながら、僕は今日も、夜の街を彷徨う。  感じるよ……。  背中にひしひしと感じてくる。  面白そうだね。わくわくしてきたよ。  君達を救済してあげるよ。  僕は歩くスピードを少しずつ速めて行く。  ついてくる奴は誰かな。  思わず笑みを溢す。  二人だ。  気を付けていないと普通のカップルに見えるね。けど、僕にしっかりとついてくると言う事は、間違いないよね。  歩く速さを元に戻す。そのカップルも僕の歩く速さに合わせてきた。  決まりだね。  人気の無い真夜中の公園を目指す。  しっかりとついて来いよ。  今から救済して上げるから。  薄暗い小さな公園の中へと入っていく。昼間の賑わいは嘘のように感じさせる程、真夜中の公園は静寂に支配されている。  心臓の鼓動が高まってきた。  堪らないぜ。  公園の中央にある、汚物と悪臭に塗れた公衆トイレを廻り、裏側にある細い通路を歩き、正面の藪の中に身を潜め、バッグの中からクロスボウを取り出す。  相手は銃を持っているんだ。こっちも飛び道具を使わせてもらうよ。  僕は自分が潜む、藪に向かってくる一本の通路に視点を集中させる。  銃で両サイドからの挟み撃ちはないよね。下手したら相撃ちを招きかねない。  一人は必ずこの通路を使う。もう一人がどちらに回り込んでくるかだね。  一人の男が小走りで、向かってくる。  予想通り!  クロスボウの引き金を引き、矢を放つ!  矢は男の胸を捉える。  男は息が詰まったような声を上げて倒れ込んだ。  もう一人だ。  どっちから来る。  目を閉じて耳を澄ます。  微かな音が、左の耳に入り込んでくる。  僕は左側に神経を集中させる。  微かに動く植栽。  揺れる植栽の陰に現れた微かな黒い人影。  矢を放つ!  女の呻き声が響く。 「やったね」  僕が勝利を確信して立ち上がった瞬間!  背中に熱い衝撃を受け、呻き声を上げて倒れ込む。  近づいてくる足音の方を振り向く。男は胸に刺さった矢を抜き、銃を構えて向かってくる。  防弾チョッキか……。  男との距離がやたらと近くなる。  僕はいきなり上体を起こし、クロスボウを構える。 「この距離なら、頭を狙っても外さねー!」  今度は後頭部に硬くて熱い衝撃が走る。  頭の中身が一気に弾け飛び、全ての物を一気に失ってしまったような感覚……。  終わった……。  全てが真っ白に染め上げられた世界……。  成美ちゃん……。今回の敵……。ヤバイよ……。  
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