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追われる者
私は濃いグレーのスーツに黒いサングラスをかけ、昼間の街中を堂々と歩く。
誰も私に気づきやしないことが、可笑しくて堪らない。
十二人の人間を殺した人間が、街中を平気で歩ける社会……。
笑いが止まらない。
私は笑い声を抑えながら、賑やかな街中を歩き続ける。
暫くすると雑踏の中にいる自由な自分に飽きてきた。
場所を変えよう……。
敢えて、狭い通りを選ぶ。
人と人がやっと擦れ違うことが出来る狭い通り。両脇は老朽化した建物が隙間なく建ち並び、昼間だと言うのに、夕方が一気に訪れたような状態になる。
少しひんやりとした空気を感じながら、奥へと進んでいく。
ようやく隙間のような通りを見つける。
人が一人やっと通る事ができる通路のようなもの。建物と建物の隙間が作り上げた通路。
自ら闇を求めて、この通路に入り込む。
目の前にお店の紫色の看板が現れる。夜になると妖艶な雰囲気を醸し出すような色の光を発するのかな……。
私は紫色の看板を見つめ、店の木製のささくれ始めたドアの前に立ち、昼間は眠っている通りの静けさを一人楽しむ。
静寂を破るかのように耳元に入ってくる、軽めの音を響かせる足音!
反応して振り向く!
私はこの通りに入ってきた男の喉にナイフを突き刺し、笑みを浮かべる。
男は驚いた表情を浮かべたまま、自分だけの時間が止まる。
ナイフで喉を抉るように突き立て、男の懐から銃を奪う。
男の左脇の下から、銃を突き出し、後を追うように入ってきた女の顔面を狙い、引き金を引く。
血飛沫を上げ、女の頭部が吹き飛ぶ!
男の喉からナイフをゆっくりと抜く。喉から血を噴き出させながら、支えを失い、男は正面から倒れ込む。
女は仰向けに倒れ込み、顔面の上半分は吹き飛んだ状態で、辺り一面には脳味噌と赤く染まった頭蓋骨の破片が散らばり、私の足元に向かって目玉がころころと転がってきた。
昼間にこんな細い通りに入ってくるカップルなんていないよ。
笑いが止まらない。
殺気を放つカップルなんてどう考えてもおかしいでしょう。
だいぶ前から分かっていたよ。
カップルのおまわりさん達が私を狙っていたことくらい。
私は予め準備していた袋に二人の死体を詰め、シートで包み台車に乗せて、この通りを速やかに去った。
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