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奈良都と泉の連絡を待つ私達。
ピリピリとした緊張感が張り詰める空間を引き裂くかのように、私のスマフォが鳴り響く。
泉からだ。
私はスマフォに出る。
「こんにちは~。班長の美織ちゃんかな~。相談したいことがあるんだけど~」
スマフォから響く異様に明るく、テンションの高い声。
それに、バカとしか言いようのない喋り方。
「貴方、誰なの?ふざけていないで、泉に変わりなさい」
「ひど~い。大真面目なのに~。カップルのストーカー、何とかして下さいよ~」
カップルのストーカー……。あの二人なら、街中を普通に歩いていれば、カップルに見えるかもしれない。
頭の中を駆ける嫌な予感……。
「貴方……。成美 桜花なの……」
「やっと気がついた。鈍い班長の下で働いている人達が可愛そう」
急にクールな喋り方になり、背筋に寒気が走る。
「何故、貴方が泉のスマフォを使っているの?」
両脚に震えを感じながらも、威厳を保ちながら応対をする。
「何故かな~。教えな~い」
また元のやたらと明るく、テンションの高い喋り方に変わる。
「教えてくれなくても、大よその見当はつくけどね」
「そうなんだ~。優秀だね~。流石、班長さん!」
「バカにしていないで、本題に入りなさいよ」
「これが本題だよ」
「そう。謎かけが好きなのね。私は貴方と直接会って話がしたいな。スマフォを通してじゃなく」
ここは思いっきり大胆な話を振ってみる。
「私とお話をしたいんだ~。良いよ。ただし、美織ちゃんが一人で来ること」
「良いわ。一人で行くわよ。時間と場所を決めましよう」
「約束したいけど~。今はその気分じゃないな~」
「怖気づいたの。成美さん。私が怖いのかしら」
ここは挑発をしてみる。
「成美ちゃんって呼んでくれたら、考えようかな~」
挑発には乗らないか。
「成美ちゃん。私は貴方とゆっくりとお話がしたいの。考えてくれないかな」
「本当に呼んでる。笑いが止まらない。バカじゃないの~」
成美の大声で笑いながらの応対。
ここで切れたら終わりだ。私は怒りを抑え、成美との会話の継続を試みる。
「美織ちゃん。お話をするのは、機会を改めよう。これは挨拶だから。またね~」
泉のスマフォは切れた。
「班長。かけてきた場所が分かりましたよ。行きますか」
美雪が静かに話しかけてくる。
「行っても、私達が到着した頃には、成美は消えているわよ」
私は溜息をつきながら答える。
「そうですね……」
美雪が小さな声で呟く。
「奈良都と泉は成美に殺られた。そう見て間違いないでしょう。どうしますこれから」
勇樹が冷静に問いかけてくる。
「恐らくそうでしょうね。とにかく成美を調べるわよ。夏海と冬真の情報では、成美の表面的なものでしかない。もっと深く掘り下げるわよ。成美の事を良く理解しなければ、成美を追い詰める事なんて出来やしない」
「了解しました。三人で成美を追い詰めましょう!」
勇樹と美雪の返答が揃った。
成美!
必ず貴方を追い詰める!
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