導かれし者

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   ロビーの長椅子に一人で座り、色々と考え込む。成美は最も殺したい人間を殺さずに生かした。生かすことによって、一生、死の恐怖に怯え続ける人生を送らせるようにしたのだ。  成美の恐ろしさを今になって感じる。我々、三人で成美を倒すことが出来るのだろうか。今までの自信の基盤に亀裂が入ったような感じだ。  私は頭を上げ、正面を見据えた時! 感じる只ならぬ気配。  背中を一気に駆け抜ける寒気。 「美織ちゃん。少しお話しようか」  背後から聞こえてくる、明るくも何処か悪質で闇を彷彿させるような声。 「成美 桜花なの……」  抑え込んではいるけど、声に微妙な震えが伝わってしまう。 「そうだよ。美織ちゃんも人を殺したことがあるんだね~。血の臭いって、消えないんだよ」  成美が私の背後から顔を寄せてくる。今までに感じたことの無い寒気に襲われる。 「どうして、私の事に気がついたのかしら」 「殺気かな~。それに、あのストーカーカップルのスマフォから色々な情報が取れたから」 「成程ね。こっちがつけられていたとはね。貴方もストーカーとしての素質が十分あるわよ」  ここは強気に返していく。 「失礼しちゃうな~。ここで待っていたんだよ。美織ちゃんがくるのを」 「ここに私が来るとは限らないでしょう。他の者が来たらどうするつもりだったの」 「即、抹殺かな~。他の人とお話をする気はないから~」 「そう……。それなりには考えているんだ。成美さん」 「成美ちゃんで良いよ~」  命のやり取りの最中、ふざける余裕……。一体、成美の頭の中はどうなっているんだ……。  恐怖を感じながらも、思わず微かな笑みが毀れてしまう。 「ようやく笑ってくれたね。美織ちゃん!」  成美の腕が私の首に巻き付き、喉を絞め上げる。  息が詰まり、頭の中が真っ白になりかけたが、両手を後ろに回し、成美を掴み、身体を前に倒す感じで回転させて、成美を投げ飛ばす。  成美の腕が蛇のように執念深く私の首に絡みつき、外すことが出来ず、私の身体は成美の身体の上で回転をしてしまい、成美に喉を絞め上げられ続ける状態に変わりはなかった。  私は指を絡みつく腕の隙間に挟み込み、何とか絞めを少しは緩めることができたが、このままでは落とされるのは時間の問題だ。 「美織ちゃん。もう少しお話をしたかったけど、邪魔が入ったみたいだね。またね~」  身体に凄まじい衝撃のような物を受け、私の意識は遥か彼方へと飛んでいった……。
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