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ギルドへ行こう
「サーシャ、今からギルドに行こうと思いますが、あなたも一緒に行きますか?」
私が洗濯物を抱えた姉に声をかけると、鈴を転がしたような声で元気な返事が返ってきた。
「あ、シェル。えっとねぇ……今からお洗濯をして、ついでに靴を洗おうと思ってるの! 今日はお天気がいいからね」
「そうでしたか……手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫だよ! 何か素敵な魔物さんと会えるお仕事あったらよろしくね♪」
サーシャは能天気な声で私を送り出した。
彼女は、これでもなかなか腕の立つ冒険者だ。
サーシャがギルドの依頼で、畑を荒らす巨大なイノシシの魔物をナイフで一撃で屠ったのは、彼女のちょっとした武勇伝である。
「サーシャはあんなに細くて美人なのに、どこにそんな力があるのか……私には真似できませんねぇ」
私は独り言をつぶやきながら、街の中心にある冒険者ギルドの扉を開けた。木製の扉がキィィィと音を立て、活気溢れる光景が目に入る。
正面のカウンターでは真剣な顔で話している女性がいた。たぶん依頼の相談だろう。
壁に設置された木製の掲示板には、それを見ながらメモを取っている男性がいる。立派な宝石がはめ込まれた大きな杖を持っているから、きっと名のある魔法使いに違いない。
「いいなぁ、私もいつかはあんな杖を持ちたいなぁ……」
宝石の輝きに目を奪われていると、すぐ近くに筋骨隆々の剣士がいて危うくぶつかりそうになった。
「おっと、すみません……」
「おう、お嬢ちゃん。大丈夫か?」
「えぇ」
「何か困りごとかい? ……もうすぐオヤジさんの手が空くだろうから番号札を取ってそこで待ってるといいぜ」
剣士は近くのソファーを指差し、ドアを豪快に開けて帰って行った。
ちょっとした探し物から魔物退治まで、日常の中で起きたささやかなトラブルはたいてい冒険者ギルドに集まってくる。
下請けである私とサーシャは、特に魔物がらみのトラブルを専門に請け負っていた。
だが、私は実年齢より幼く見える外見のせいか冒険者に見えず、トラブルの相談にきたと思われたらしい。
「まぁこればっかりは、仕方ないですよねぇ……」
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