熱い山

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熱い山

 こうして彼女に引きずられるがまま、私達は靴が消えたとされる山の中にやってきたのだった。  しかし来たのはいいけども山だからまったく道は舗装されてないし、坂だったり階段状になってたりするわけで、歩いているだけでどんどん体力が奪われていく。  息切れする私に対して、サーシャはケロッとした顔で前を歩いて行く。さすが腕の立つ冒険者なだけあって、日頃から鍛えてる人は違うなぁと感心してしまう。  ――それにしても、ちょっとこれは私にはちょっと、いやかなりしんどいな、なんて。 「さ……サーシャ、ちょっと待ってください。少し休憩しましょう」 「はは、シェルは体力無いなぁ。じゃ、その辺に座って休憩しようか」  私がゼーゼー息をするのを見て苦笑しながら、サーシャは近くの大きな石に腰掛けた。私も向かいの石に腰掛ける。あぁ、疲れた。 「おや……?」  気のせいかお尻が温かい。座っている石に手を当てると確実に熱を感じる。私が怪訝な顔でサーシャの方を見ると、彼女も同じことを思ったらしい。 「この石、なんだか温かいね。ずっと座ってると少し熱いくらいかも」  サーシャは警戒した顔で、地面にそーっと指先を触れた。 「あ、地面もかなり熱いなぁ……靴を履いてるから気づかなかったよ。そういえば、この山はヒートマウンテンというあだ名だったねぇ」 「ヒートマウンテン?」 「うん、もともと名前なんて無い山だったんだけどね。でもいつの間にか火の精霊の加護が強まって、地面が熱くなってそう呼ばれるようになったんだって」 「そういえば周辺の植物も、あんまりその辺じゃ見かけない感じのですね」  周囲を見渡すとトゲのある分厚い葉をした草や、見たことないような毒々しい派手な色の花がたくさん咲いている。おそらく熱に強い植物なのだろう。  ――その時、急にガサッと何かが動く音がして、大きな草の陰から見覚えのある靴がぴょこっと跳ねて飛び上がるのが見えた。
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