Time is…

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「ねえレキ。両親と過ごす時間て一年に何時間あると思う?」  唐突だな。考えたこともないし、興味もない。俺は「さあな」と答えた。 「あのね、別居してる両親と過ごす時間は平均して一年に二十四時間なんだって」  データの信頼性はさておき、“親の余命年数×1日”が一緒に過ごせる時間というわけだ。医療の進歩で寿命は飛躍的に伸びたが、軍人の場合は今も昔も大して変わらない。  だとすると、俺はあと何日、時間を共にできるのか。幼いころ両親を亡くしたミハエルは、とうにその尊い時間を失っている。 「俺に親孝行しろって?」 「レキは充分親孝行だよ。でも、時々ごはん食べてあげる時間を増やしてあげたら、喜ぶと思うなぁ」  昨日俺は母親からの食事の誘いを断った。その通話を聞いていたミハエルがさりげなく諭す。実家は車で一時間程度の距離だが、なんとなく面倒で自分のスケジュールを優先しがちだ。 「レキともね、あとどれくらい一緒に過ごせるかなって思ったんだ。でね、ちょっと探してみたんだけど」  ミハエルは携帯をポケットから取り出し、検索画面を俺に見せた。それは、おひとり様用1LDKの間取り図だった。ミハエルの意図が読めない。 「なんだ、これは」 「レキがファルちゃんと結婚したら、僕、引っ越すでしょ。だからマンション探してたんだ」  ますます話が見えない。
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