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「ふ、ふふ……! 滾る、滾るわ……!」
そして、ヴラドに現れる変化はそれだけに止まらない。
耳障りなまでの哄笑を上げながら、彼の身体を鎧う筋肉がぐむぐむと肥大化し、その姿も変性していく。
背中には巨大な翼が生え、手足は太く、短くなり指先からは鋭い鉤爪が伸びて全体がびっしりと黒い鱗に覆われる。
胴も同じく巨大化し、黒鱗に覆われて尾骨の辺りから丸太ほどの太い尻尾が伸び、首が伸びて頭も巨大な顎と一本の竜角を持つ竜のそれへと変貌する。
ヴラドは、巨大なドラゴンへとその姿を変えた。
【ーーーーーーーーーー!!!!】
咆哮。
竜と化したヴラドがその顎から轟音を発すると、部屋がびりびりと震える。
竜頭の上には変わらず二段のHPバーが浮かんでおり、更にその上には≪Vlad・the・Vampire dragon≫の文字列が表示されていた。
「リオノールさん! 針!」
「は、はい!」
ヴラドの咆哮が収まると、滞空していたドラゴンの身体が見覚えのある黒いオーラに覆われる。
どうやら≪破邪の聖針≫はまだお役御免とはならないようだ。
「レインさん、指示をお願いします」
「お、おう! まずはアイツのオーラを引っ剥がすのが最優先! グレイヴ、チェリオはリオノールの壁に徹して、ムヒとウナは二人の援護! ライは出来たらヴラドの撹乱で、センは俺とギミック解除後の一番槍を頼む! 連中が浮き足立ってる今のうちが主導権握るチャンスだ! 最速で行くぞ!」
矢継ぎ早に下されるレインの指示に、全員の応えの声が重なる。
「これでいいのか」と言わんばかりにさり気なくこちらにちらりと視線を寄越すレインに頷きを返しつつ、俺は与えられた仕事をこなすべく魔法の詠唱を始めた。
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