姉妹喧嘩

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「彩楓? どうかしたの?」 コートに着くと、そこにはすでに彩葉が準備を終えて待機していた。 彩楓の顔を見るや何かを感じ取ったのか、気遣うように声を掛けるが彩楓は「なんでもない」とはぐらかし、コート脇に置かれた籠の中にタオルとスポーツドリンクを入れたボトルを入れる。 そんな彩楓を気遣わしげに見ていた彩葉だったが、彩楓が手早く準備を済ませてコートに入るとひとまず気にすることをやめたのか、目を瞑り、ラケットを捧げるように両手持つという彼女の試合前のルーティンを済ませ、自身もコート入りした。 「アップはどうする?」 「いつも通りで。彩葉からでいいよ」 「わかった」 彩楓に遅れてコート入りした彩葉にシャトルを渡し、コートの中央に立つ。 彩葉がシャトルを軽く打つと彩楓はそれを真っ直ぐ彩葉の元へと打ち返し、彩葉もそれを真っ直ぐ彩楓の元へと打ち返し、試合前のウォーミングアップが始まった。 「試合開始します。準備してください」 ウォーミングアップ開始から数分、審判員達の準備ができたらしく主審からそんな声を掛けられると、最後に一発彩葉が鋭いスマッシュを打ち、彩楓がそれをラケットで受け止める。 弾き返すのではなく、衝撃を殺し、一度ガットの上を弾ませてからラケットでキャッチしてみせるとギャラリーで見物していた他校の生徒や観客達が騒ついた。 「アップ中一回もシャトル落とさなかったよね……?」 「当たり前のようにやってたけど最後のアレ何……? どんな力の使い方すればあんなことできるの?」 観客達の動揺を尻目に、姉妹は淡々と試合の準備を済ませ、再びコート入りする。 主審の合図でネット越しに握手を交わし、対角線上にラケットを構えると彩楓のサーブから試合が始まった。
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