姉妹喧嘩

5/21
前へ
/215ページ
次へ
「ーーーッ!」 ばさりと布団を蹴飛ばす勢いで身体を起こす。 荒れた息と早鐘を打つ心臓を必死に宥めつつカーテン越しに窓の外を見ればまだ暗闇が広がっているようだった。 充電コードに繋がった携帯端末を手繰り寄せ時間を確認すると、時刻は午前二時。 当然ながら起きるには早過ぎる時間だった。 「………夢」 ようやく幾分呼吸も落ち着いてきたところでぽつりと呟き、深いため息を一つ。 のろのろとベッドから這い出て、キッチンに向かうと冷蔵庫から五百ミリリットルのミネラルウォーターのペットボトルを一本取り出し、寝室に戻る。 「ふぅ……」 ボトルの中身を一気に半分ほども飲み干し、ようやく安堵の息を漏らす。 二年前のバドミントンの都大会、それ以降彩楓が精神的に弱った頃に時折見る悪夢は決まってあの試合の追体験だった。 ここ一年程はめっきり見ることも無くなっていたのだが、最近はまた時折こうして顔を出す。 「今日は……やっぱりあれのせいかな……」 ちらりと部屋の片隅に目をやると、そこには真新しいガットが張られた、夢に出たラケットが壁に吊るされていた。 その近くには新調したバドミントンウェアが綺麗に畳まれて置かれている。 「バドミントンを教えてほしい」 以前百合にそう請われ、散々渋ったが結局押し切られて今日、夜が明けたらいつものメンバーで市内の体育館に集まることになっている。 だからだろうか、こんな夢を見てしまったのも。 「……寝よう」 すぐには眠れないだろうが、集合はお昼過ぎなので時間的な余裕はまだまだある。 目覚ましのアラームがきちんと設定されているかを一度確認してから、彩楓は再びベッドへと潜り込んだ。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1731人が本棚に入れています
本棚に追加