姉妹喧嘩

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「あ痛」 美月と二人肩を寄せ合い一つの画面を眺めていると、不意に頭にこつんと衝撃を感じ、半ば反射的にそんなリアクションを取ってしまう。 「あら、ごめんなさい。イチャイチャの波動を感じてしまってつい」 「なんですかそれ……」 頭にぶつかって今時珍しい板張りの床に落ちたものーーバドミントンのシャトルを拾い上げ、こちらに打って寄越したであろう百合さんに投げ返す。 飛距離が足りず、コートの中に入ったところで落ちたシャトルを百合さんはラケットを使って器用に拾い上げ、ネットを挟んで向こう側に陣取る彩楓と再びラリーを始めた。 「百合はほんとにもう……」 「はは、彩楓がちゃんと来てくれたからテンション上がっちゃってるんだよ。彩楓も楽しんでくれてるみたいだし」 本日、俺たちは仕事で都合がつけられなかった晴陽と聖夜さんを除いたいつものパーティーメンバーで海西市の市営体育館へとやって来ていた。 体育館のコートを一面借りて、兼ねてから百合さんがやりたいと言っていたバドミントンの練習会をやっているところだが、練習会とは言いつつも相手を変えながらラリーを打ち合うという緩いもの。どちらかというと遊びの比率が大きい。 いつぞやの奥田女子との賭け試合後の様子を見た限りでは彩楓にバドミントンをやらせるのは一抹の不安があったが、こうして遊びの延長としてやる分には彼女としても平気なようで朗らかに笑いながらシャトルを追い掛けている。 もちろん彼女が本気で打ち合いをしたら百合さんどころか俺も相手できる自信があまりないので、彩楓もかなり手を抜いてくれている。 「今日のほんとの主役は彩楓だし、まずは楽しんでもらって抵抗を弱めないとな」 「……そうだね。ちょっとだけ申し訳ない気もするけど………」
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