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【ーーーーー!!】
怒号と共に振るわれる巨大な氷の鉤爪を≪パラドックス≫で受け止め、一瞬の拮抗の後に押し返す。
押し返す際に刃を傾けて、爪を刀身に滑らせるようにしてフェンリルの爪振り下ろしの軌道を変えると、右前足が床に着いた瞬間に今度は左前足が横薙ぎに振るわれる。
「どっせい!」
しかしそれは割って入ったディエゴが戦斧で受け止め、かつては一度に数人のプレイヤーを薙ぎ払った豪腕はたった一人のプレイヤーに沈黙させられた。
「サンキュー!」
「おうよ! ってもう一発!?」
護ってくれたディエゴに一言短く礼を言い、フェンリルの懐奥深くに入ると跳躍し、その腹に深々と剣を突き立てる。
そのままぐりんと剣を捻り、抜きざまに胴を薙ぎ払うとフェンリルが吼え、ディエゴが抑えていた左前足を一度引くと再びその場で薙ぎ払う。
流石に二撃目は踏ん張りが持たなかったのか、キッチリ斧で受けつつもディエゴが数メートル吹き飛ばされ、次の瞬間氷のスパイクを纏ったフェンリルの尻尾が土と砂埃を巻き上げながら彼のいる周囲を薙ぎ払う。
「ディエゴ!!」
内心で「逝ったか!?」と思いつつも、砂埃の中に死亡エフェクトが混じっていないのを確認し、一息。
土靄が晴れると、そこではマルティウスとメディナが盾を構え、ディエゴを背後に庇っていた。
どうやら間一髪で盾持ち二人が間に合ったらしい。
狙った相手が無事であることに苛立っているのか、フェンリルは赤い瞳でディエゴと自身の邪魔をした二人を睨み口元から冷気をゆっくりと吐き出し始める。
そして一通り息を吐き終え、次に大きく息を吸い込んだ瞬間、その鼻っ柱に極太の雷閃が幾条も叩き込まれフェンリルが絶叫を上げた。
「オラァ!」
ブレスを無理矢理キャンセルさせられたフェンリルが怯んだ瞬間、俺は氷の脚甲に覆われた左の前足に取り付き、純白の光を纏わせた≪パラドックス≫を叩きつけるようにして振るう。
するとどうやら俺と似たようなことを考えた奴がいるらしい。反対側でも荒々しい雄叫びとがんがんと叩きつけるような剣戟の音が響いていた。
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