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にぎやかな足音とともに、明るい声が屋内へ向けて入ってきた。
「ただいま帰りまし……ッ! わあぁ!」
次いで、派手に床に転がる音が。
やれやれ、とため息をつきながら、ヌイは書斎から表へ向かって歩き始めた。
歩きながら、ガラス瓶に入った真水を片手で取る。
果たして、開け放たれた表戸の前には床に倒れたナリンの姿があった。
「うぅ。いッてて……」
「また引っ掛かりましたね、ナリン。いつ、いかなる時でも油断はしない。それが魔闘士というものです」
「ごめんなさい、ヌイ様」
そう叱りながらも、擦りむいてしまった腕を瓶の真水でていねいに洗い清めてくれる。
慌てず騒がず、いつも冷静なヌイ。
いたわる言葉はないけれど、そんな師のいつもの行動は、ナリンにほのかな喜びを与えていた。
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