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「あの子がいなくなった」 彼がそう言い出した時、あたしがまず考えたのは「これは本当に面倒な事になった」という身もふたもない事実だったのは、母親としては失格だったかもしれない。 でもここは都会の繁華街の雑踏で、あたしは娘達の為にコーヒーショップで冷たい飲み物を買ってきたところで、今日は多くの人が休日を取る一週間の始まりの日だ。 よりによってこんなところであの子とはぐれるなんて。 あたしの顔色が変わったのを見てとってか、彼が慌てて弁解しはじめた。 「君が買い物に出て割とすぐに、この子がトイレに行きたがってあそこのお店に行ったんだ。トイレの個室に3人は入れないし、この子はまだ1人ではトイレが出来ないから、あの子にトイレの前で待ってるように伝えて…」 「え?!はぐれたのはお店の中だったの??あなたなんでここにいるの?バカなの?」 あたしは急いでその店に向かって走り出した。彼が妹の方を抱えてついてきているのがわかる。 「すみません、多分2〜30分位前に、夫が娘とはぐれたみたいなんですが!」 コーヒーショップの冷たい飲み物を手に店に駆け込んできた(あたし)を見て、店員は一瞬眉をひそめたが、(それはここが喫茶店だから仕方ないと思う)すぐ後に続いた彼を見てすぐに理由がわかったらしい。奥の席を指しながら笑顔で答えてくれた。 「あ、お母様ですか?良かった。お嬢さんならあちらの席でココアを飲んでお待ちですよ」 それからあたしと彼はある種の虫の様に頭を下げまくって、サービスですからとココア代を受け取ってくれない店員さんと格闘し、結局店頭で販売していた焼き菓子の詰め合わせを購入してぐったりと帰路についたのだった。
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