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   ライブを目の前にして、 大丈夫だろうかと心配していたが、菫の調子は大分よくなった。カラオケで最後の一回の練習を終えた俺と彼女は、さっき探しておいたスポットに向かった。 俺たちより先に来ていたあるグループがライブを行っていて、人々の集まりができていた。流れるボーカルのすかすかとした声が俺たちの心まで惹いた。 「上手だね。私もあんな風にできるのかな。」 菫は感心する一方、自分ももう少しであんな風に歌わなければならないという負担感を感じているのか、少し気弱そうにいった。 「大丈夫さ。菫なら、あれよりもうまくいくからさ。」 彼女の肩を軽く叩いて励ましてくれると、彼女はうん、と軽く頷いたが、その顔には未だに不安が宿っていた。 「菫。手、出して。」 「えっ、こう?」 差し出された彼女の手を両手で握り、その冷えた手から緊張が伝わってきた。 「菫。きっと大丈夫。」 「でも…翔は怖くないの?」 「怖いよ。」 「えっ。」 苦笑いしながら、素直に言うしかなかった。もし、前みたいに誰も見てくれなかったらどうしよう。その記憶は今になっても確かに残っていて、一歩を踏み出そうとする俺の足をつかんでくる。 「今ものすごく怖い。また無視されるんじゃないかってね。」 「じゃ、止めても…」 俺は首を横に振った。 「怖いけど、君と一緒なら、踏み出せそうな気がする。今まで君と頑張ってきたその日々を、俺は信じてる。」 その言葉に、菫の瞳が潤った。そして、俺の手を握り返し、彼女はもう怖くないといわんばかりに前へ踏み出した。 他のグループのライブが終わり、俺と菫はライブを準備した。ギターケースを地面に置き、ギターの調子を確認した。人々の視線が一気に集中され、冷えた汗が背中に流れた。 チューニングを終えて、彼女の方を振り向いた。目が会うと、彼女はぎこちなく笑った。同時に頷いてから、俺はギターを弾き始めた。
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