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 さっきを振り返ると、自分でもどんなつもりでそんな提案を申し出たか理解できない。体が痛いのも嘘ではないけれど、だからといって一人で帰れないほどでもない。 体が痛いといえば彼女はきっと断れないだろうという狙いが的中した。少しずるい気もしたじたけれど、どうせこうなったからには少し甘えるのもありかな。 家には当然というか、やっぱり誰もいなくて、俺はドアの前でぽつんと立っていた菫に手招きをした。 「誰もいない。大丈夫。」 俺の手招きに彼女はお邪魔します、といいながら家の中に入った。すぐ自分の部屋に入ろうとする俺を、彼女が呼び止めた。 「翔、薬とか、ある?」 「多分ないと思うけど…」 そう答えると、彼女は振り向いて玄関に向かった。 「私、薬買って来るね。おとなしく待っててね。」 「ま、待って、お金は?」 俺が言い終わる前に靴を履き終わった彼女はドアを開けた。 「前にご飯おごってもらったもの。そのお返しよ。」 菫を止める前に彼女は家を飛び出して仕方なくドアを開けておいたまま彼女を待つことにした。 とんとん、とノックの音が聞こえてきてドアを開けると、菫がビニール袋を手に持ち息を整えながらドアの前に立っていた。 「ごめん。遅かったよね?」 「悪い。せっかく会ったのに、気を使わせてしまって。」 「いいのいいの。部屋に入ってゆっくりしていて。」 菫は俺の背中を押しながらそういった。そんなに痛いはずじゃないはずだったけれど、心配してくれる誰かが隣にいると、余計に体が痛んでくる。 俺の部屋に入った菫は、不思議そうに俺の部屋を見回した。 「なあ、菫。」 「うん?」 「着替えるから、少し一人にしてくれる?」 「あっ、ごめん。すぐ出るね。」 菫が出ていってジャージに着替えながら、部屋に家族以外の誰かが来たのっていつぶりなんだろう、と思った。子供の頃はよく友達と自分の部屋で遊んだりもした。 そういえば皆どんな風に過ごしてるんだろう。俺みたいじゃなければいいのにな。もう連絡さえ取れない忘れられた昔の友達のことはさておいて、俺はドアを開けた。
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