シルバーホーク

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 ここは数十キロにも及ぶ一つの巨大な岩を崩して作られた街ロックビル。ここでは、鉱山資源が沢山採掘されており、それを財源として公共の建物や、武器、防具、それこそロットが通う学園などを造っている。その鉱山資源を目当てに、色々な商人やドワーフといった鍛治職人、その他様々な者達がやってくる賑わう街である。  しかしそんな街だからこそ、それを狙いやってくる犯罪者が後を絶たない。そんなロックビルを守る為、自警団のようなものが設立されている。その名を太陽の翼。彼ら自警団のおかげでロックビルでの犯罪はほぼ影を潜め、この街の英雄のような扱いを受けている。  その中で、一人だけ更に有名な人物がいる。名をシルバーホーク。銀色に輝く髪、鷹のように凄まじい速さで獲物である犯罪者を捕まえる事からそう呼ばれるようになった。しかし、素性は謎に包まれており仮面をつけ顔も判別出来ず、性別は一応体格からして男性だろうという全く根拠すらない理由がつけられている。  そんな彼の情報で、唯一出回っている情報かある。それは、この街の出身であるという事だ。それもまた根拠はないらしいが、ロックビルから別の町に行くまで馬車に乗って約一日掛かる。彼が犯罪者が現れて捕まえるまでの時間に一人頭約五分程度しか掛からないという事を考えると他の町から来ているとは考えられない。そうなると自然とロックビルの何処かに住んでいる。そう考えるのが自然なのだ。それも、朝であろうが夜であろうが彼がほぼつかまえてしまうのだから頷ける筈だ。 「号外だよー! また、シルバーホークがロックビルに出た野盗を捕まえた! これで彼が捕まえた犯罪者の数は千人超えだ!」  ロットが普段使う帰り道に、人集りが出来ている。それは勿論、今その記事を配っている男が声に出したシルバーホークの記事だ。彼の記事を書くと売れ筋はうなぎ登りであり、毎日のように人集りが出来ている。 (凄い人気だな……)  ロットはその人集りと熱狂に少し引きながらその場を通過する。彼は今、単純に自分の住んでいる場所に帰ろうとしているわけではない。とある場所を目指しているのだ。  パティラカフェを出てからその記事を売る男性の所を通過し、歩く事約十五分。ロットがやって来たのは、太陽の翼の本部である。どうやら、彼は掛け持ちで自警団でも何かしらの仕事をしているらしい。 「こんにちは」 「あ、ロットさん!」  太陽の翼の門を潜り、自警団のメンバーの証とて持っているバッチをかざすと扉が勝手に開く。そして、彼が挨拶した事に反応したのはここで受付を務める女性のシエラだった。 「シエラさん、他の人は集まってますか?」 「はい! 皆さん、会議室でお待ちですよ!」  シエラがそう言うと、ロットはお礼をして会議室に向かう。中では既に声が聞こえており、自分以外は全員集まっているようだ。扉を開けて中に入ると、ロットに気が付いた女性が近づいてきた。 「団長! また、レイスが遅刻だよ!」 「レイスが?」  何故かロットを団長と呼ぶ女性。ロットは何か考えるような仕草を見せて、何かを思い浮かんだように彼女を見た。 「メル、アンジェラは何処にいる?」 「アンジェラなら今丁度、レイスを叩き起こしに行ってるよ?」 「だったら大丈夫じゃないかな? きっと、アンジェラがレイスを死なない程度には痛め付けて連れて来るよ。多分、二度と遅刻しようとは思わないんじゃないかな?」 「団長がそう言うなら良いけど、あ、また今日も凄かったね! 団長の記事!」 「あははは……。別に記事になりたくて捕まえてるわけじゃないんだけどなぁ」  そう、このロット・シルバラングが何を隠そうロックビルで一番有名なシルバーホークその人である。まさか、こんな少年がこの街で一番有名な人物だと誰が想像できるだろうか。
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