ソフィア、再び

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ソフィア、再び

「……すみません。今、なんて?」  ソフィアと約束してしまった日は、悩んでいる内にすぐに来てしまった。リーパーから言われた通りの言葉を告げた時の彼女の顔は、旦那に向けるものよりも遥かに酷いものだった。 「この商売は無しにしろと死神から忠告を受けたんだ…………ソフィア、すまないけど君の為なんだ。死神には……逆らえない」 「そんな……もういくつか見繕って……」  倒れそうになったソフィアをアマニータが支える。彼女は籠りきりで本を漁ってくれていたのだが、城の中でリーパーとの話を告げると「仕方がねえだろ」と承諾してくれた。多分、本心じゃない。 「その分は全部俺達が買い取る。俺はこいつみたいに金使い荒くねえから、服ぐらい購入出来る……俺はできない約束はしない」 「そういうわけじゃ……ないんです。私は、色んな方に着て欲しくて……」  アマニータはどうすることもできず立ち尽くしていた僕を睨みつける。 「目先のことに囚われて色々と決めちまうからこうなるんだ」  ソフィアは僕を攻める気もないと言いたげな表情だった。そんな視線が余りにも辛くて、リーパーが言っていたように今すぐにでも彼女を諦めて帰宅したいとすら思えた。ゆっくりと深呼吸するように口を開く。 「……ソフィ」 「ねえねえソフィア! 吸血鬼君が来てるの!?」  ピリピリとした空気に間抜けな声がドアをバアンと開け、入り込む。マンフリードは僕に軽く会釈をして握手を求めたが「こんばんは」とだけ返した。彼の視線はアマニータに移る。 「あれ、そちらの女性は?」 「……俺はアマニータ。そこのバカの付き添いだ」 「初めまして! 僕はマンフリード・シュナイダーです」  マンフリードはアマニータにも握手を求める。右手でギュッと返し手を離したアマニータだが、彼女の長い手入れされた爪が刺さったのかマンフリードは痛そうに摩っていた。 「マンフリード……少しあっちへ行ってて……」 「どうしたのソフィア? あんなに服が売れるって楽しみにしてたのに。ピオルさんに頼まれたから鏡のことも調べてくれって。久々に話かけてくれたじゃないか」 「……それは」  ソフィアはちゃんと約束を守ってくれていた。なのに、僕は……  やる気を完全に失った僕の代わりに、アマニータは彼に事の経緯を説明する。マンフリードは何度も頷き話を聞いていた。一通り話終わると右手の拳を口に添え考え出す。 「なるほど……死神……」 「呪いだって……得意な死神からの忠告じゃ受け止めるしかないなんて……」  今にも消えそうな声のソフィアに 「いや、何とかなるかもしれないよ?」  マンフリードは気軽に答える。
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