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適当に目線をあちらにやっていた僕も、倒れたソフィアもアマニータも、いっせいに彼を見て口を揃えた。
「は?」
僕らのハーモニーに屈することなくマンフリードはニヘラと気持ち悪い笑顔になる。
「ちょっと待っててね」
そしていそいそとスタッフルームへ入っていく。考古学者だと言っていたが、発掘作業で意外と鍛えているらしい。ダッシュで戻ってきた彼は、古めかしい箱を僕らの前に大事そうに置いた。中身は太陽が掘られたブローチだった。銀製だろう。本物の銀に反応して首の後ろがざわざわする。
ソフィアはあまり興味が無さそうに覗き込んだ。
「これは……?」
「死神避けって言うんだ。実は色々と作業してたら見つけて、研究と護身がてら持ってたんだ。僕魔界考古学好きだから、いつ突然消されても分からないし。これがあればソフィアも死神からの忠告、無視できるよ!」
「確かにそれは本物みてーだな。それを見ていると俺もさっきから胸騒ぎがする」
アマニータの言葉に、ソフィアは見直したとばかりに顔を輝かせる。マンフリードはブローチをそっと彼女の胸に付けてやった。
「いつ死んでもおかしくないなら家庭なんて持つんじゃないよ」
咄嗟に僕の口からでた言葉にマンフリードは苦笑する。アマニータには睨まれてしまった。
「まあ、確かに……だから最近はあまり危険地帯にも行ってないんです」
「そうだったの?」
「そうだよ。突然僕が居なくなるのは困るかと思って……」
「マンフリード……」
やっと夫婦円満へと向かいそうな二人を見て僕は……
「なあソフィア! でもそんなダサいブローチいつでも付けられるわけがないだろう!? 僕がもう一度交渉してくる! だから今度こそ、今度こそ服を売ろう! 絶対にもう君を悲しませるようなことはしないさ!」
多分、いや絶対に場違いなセリフだったと思う。
空気が凍る。見たことも無いようなアマニータの表情をこれ以上見ていられなくて
「ソフィアの繕ってくれた服をくれ。まずは彼らを優先して売り出す。この間のも悪くは無かったからさ!」
そう叫んだ。
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