第一章『ウィーンの夜と運命の契約』

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「そこであなたに出会ったんです。いかにもな吸血鬼ファッションのあなたに!」 「言うほど吸血鬼って格好かい?」 「ええ! あなたには上手く見えていないのでわかりづらいかもしれませんが、その裏生地が赤の黒マントに黒いタキシード、長髪ロングの金髪、鋭い前歯は何処からどう見ても吸血鬼ですよ!」  現世に降り立つ際に、僕の服は派手すぎるからと仲間から無理やり着せさせられた服が仇となってしまったようだ。 「そういえば、何故吸血鬼である貴方がこんなところへ?」 「今日、ちょっとある人のコンサートに行きたいと思ってさ。会場に向かったら客の中にいたバカトリオが突然騒ぎ出して何事かと思ったよ」 「それでさっき切羽詰まって私にチャームをかけたんですね」  一瞬空気が凍った。 「……バレていたの?」 「ええ。祖父は長年魔女や吸血鬼を研究してきました。だから小さい頃から何となく魔法が見抜けるようになったんです……と言っても回避は出来ないんですけどね」  えへへと言いながら頭をかく。宝の持ち腐れという奴か。そういえば大昔に目が六つある癖に、逃げる手段がないから危険は分かっても回避できないマヌケな奴がいたなあと失礼なことを思い出す。 「そんな私ですから、吸血鬼なんて怖くありません! でも他の人は違います」  深刻そうな顔で俯いて「そこで!」と顔をバッと上げる。 「吸血鬼は人間に近い見た目をしていますから、人間っぽい服を着ていただきさえすれば何も問題は起こらないはずです!」 「聖職者に当たったら面倒だけどね」 「そこは吸血鬼の何たらうんたらパワーで何とかして下さい! ようするに私の作った服を無料で差し上げますから、それで街を歩くんです! ピオルさんは人間になりすなませるし、私は宣伝になる。一石二鳥じゃないですか!」  荒い鼻息をフンフンと吐きながら更に近づいてくる。それを手で軽く流した。悪い話ではない。ただ、いくつか問題がある。 「いい案だけど……僕は夜にしか活動出来ないから、周りからはあまり見えないし現世には知り合いだって居ないんだ。この作戦は無茶だよ」 「そこを何とか……」  一つ案が無いことはないが、リスクが大きい。悩んでいると外からさっきも聞いた三人衆の声が聞こえて、それが少しずつ少しずつこの家の前へとやってきていた。ドンドンという戸を叩く荒い音からして家々を探し回っているようだ。
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