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第8話 彼女の優しさ
二学期も始まりまだセミが鳴き残暑が残る9月、皆が夏の終わりを切なく感じていたある日、俺は秋の大会が2週間後に迫っており朝練と放課後の練習に明け暮れる日々を過ごした。
俺は毎日汗やほこりまみれになり必死に練習をした。今年はレギュラーメンバーとして期待されている分、それに応えないといけないと言うプレッシャーに見舞われていたからだ。
しかし遥香は俺が部活で忙しく週末休みが取れず、なかなかデートに行けないことに対し文句1つ言わず毎日練習が終わる夕方7時まで待ってくれ、一緒に帰ると言う日課を繰り返した。
「彼方君、練習お疲れ様」
俺は辛い練習で疲れていても遥香と会話することで勇気づけられたのだ。周りの部員たちには既に航のせいで知られており、最近になっては特に恥ずかしいと言う気持ちはなかった。
「星野、ほら彼女が待っているぞ」
「早く行ってやれよ」
俺は先輩たちに一礼をして遥香と一緒に下校した。下校中俺たちは学校の話や航の話などで盛り上がった。
俺は遥香の柔らかく温かい手を握りながらうっすらと街灯が灯る通学路を駅の方へ歩いて行った。
そして俺たちはいつもの駅前の十字路に到着すると笑顔で手を振って別れた。
そんな生活が2週間続きついに大会当日の土曜日になった。その日は雲一つない澄んだ秋晴れに恵まれ、絶好のコンディションで俺たちは試合に臨むことが出来た。
日頃の練習成果を発揮することが出来、みごと勝利を収めることが出来た。遥香も試合会場に応援に来てくれて可愛らしいお弁当箱に俺の大好物な唐揚げや稲荷ずしなどを詰めてきてくれた。
遥香の優しさに俺は、勇気づけられた。しかし次の日、俺たちはある強豪校に惨敗を期してしまい俺たちの闘いは終わってしまった。
俺は皆の期待に応えられず自分の不甲斐なさで、試合に負けてしまった責任を全て背負いこんでしまい悲しみに打ちひしがれた。
会場のロッカールームで俺たちは汗と泥にまみれたユニフォームで何度も涙を拭った。
「俺のせいで試合に負けししまった」
「お前のせいじゃないよ。俺たちは引退するがこれからはお前がチームを引っ張ってくれよな」
そんな優しい先輩の言葉を聞いた俺は、更に涙がこみ上げてきて号泣してしまった。目と夕日が赤く染まった時、試合会場を後にするとゲート前で遥香が心配そうな顔で俺を待っていてくれた。
俺たちは重たい空気の中、夕日に背中を押される形で一緒に駅へ向かった。
すると遥香が重い口調で口を開いた。
「試合負けちゃったね」
「ああ…… 」
「でも彼方君とってもカッコよかったよ」
俺は遥香の問いにまともな感情で答える事が出来なかった。その時俺はまた悲しみがこみ上げてきて遥香の前で号泣してしまった。
「遥香の前でこんな姿見せて情けないよな」
俺が歩道の脇に崩れるように座って号泣してしまい、俺は鼻水と涙で顔はぐしゃぐしゃでまともに喋ることすらできなかった。
すると俺の姿を見た遥香も泣きながら優しく俺の頭を抱いて撫ででくれた。
「恥ずかしくないよ。辛いことがあったら私も彼方君の悲しみを分けてもらって一緒に泣いてあげるからね。だから…… ぐすん 良いんだよ、私は彼方君の彼女なんだから」
俺は遥香の優しい一言を聞き彼女の温かい胸元で俺は号泣してしまった。それから1週間後、先輩たちは部活を引退しささやかながら俺たちで引退式的な催し物などを行った。
俺はこの前の件で彼女の優しさを再確認することが出来た。大会も終わりしばらくは、部活動が落ち着き2人との時間を取ることが出来たため、早速遥香にお礼もかねて次の休みに水族館へ連れてってあげることにした。
彼女はとても喜んでくれてその日から俺達は、ほぼ毎晩のように電話をして遥香との会話を楽しんだ。
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