第1話  友人との賭け

1/1
前へ
/29ページ
次へ

第1話  友人との賭け

俺の名は星野 彼方(ほしの かなた)サッカー部の所属する高校1年だ。俺はサッカーが好きで高校も名門の学校へ推薦で入学した。入部してすぐにレギュラーを獲得し夏の大会では俺の活躍で勝利に貢献することが出来た。 そんな情報が全校生に知れ渡り放課後には女子からの告白を連日受けた。 「あの入学当時から好きでした。私と付き合ってください」 「ごめん俺今はサッカーに集中したいから付き合うとか勘弁なんだ」 俺は心の中で罪悪感を抱きながらも相手を傷つけないように気を使ってお断りをした。断った途端に号泣された女子もいてとても困った時もあった。でも軽い気持ちで交際をするなんてことは相手に対しても悪いし俺のプライドが許さなかった。 その後も同級生や先輩などから告白を受けるが気を使いながら丁重にお断りをさせてもらった。正直告白してくる女子には悪いんだが、俺の好きなタイプじゃなかったんだ。 俺の好きなタイプは? と聞かれると見た目は落ち着いていてメガネが似合う女子 いわゆる「メガネっ子」がタイプなんだ。性格はクラスで目立たなくどちらかと言うと 恋愛に奥手な感じが好きだ。 俺が女子からの告白を断ると学校中ですぐに噂になりお調子者の友人、日下部 航(くさかべ わたる)が早速話しかけてきた。 「お前また振ったのかよ中学時代からの新記録更新だな。お前理想が高いんじゃないか? 」 「そんな事ねえよ、俺は今付き合うなんて考えてないんだよ」 「へえうらやましい限りだよ。俺なんか今まで告白なんかされた事無いんだぞ」 「告白される身にもなれよ、気を使って断るの大変なんだぞ」 「学校中でお前のネタで持ち切りだ、お前が誰と付き合うのかって」 ちなみに俺と仲のいい航って奴は小学1年から同じクラスだった。高校も一緒でまさか同じクラスになるとは夢にも思わなかった。ちなみに航はかなりのお調子者だが人脈に特化しておりどんな情報でも仕入れられる。 更にこいつの親父さんは大手週刊誌の記者でそのせいか奴の情報収集能力は父親譲りの所があるのだろう。 そんな噂話を航から聞いた俺は余計なプレッシャーを感じてしまった。 一学期もあと少しと言うある体育の授業で事件が起きた。この年は梅雨明けが例年より早く蒸し暑い日が続いていた。この日の体育の授業はもちろん水泳だ。俺は走ることは得意だが泳ぎの方は少し苦手だった。 この日はセミの大合唱が鳴り響き真夏の日差しが澄んだプールの水に反射していた。そして水泳の授業が始まると俺たちは入念に準備運動を行った。 この日の内容は25メートル競走をすることとなった。するとそれを聞いた航が俺にある提案をしてきた。 「彼方俺と勝負しないか? 」 「勝負? 」 「ああもしお前が勝ったら何でも言うこと聞くぜ」 「もし俺が負けたら? 」 「俺の言う事を聞いてもらう」 「いいぜでも航お前は確か水泳部だろう? 少しは手加減しろよ」 「元水泳部だ。勝負に手加減なんかあるか未来のサッカー部キャプテン」 俺は航の挑発に乗ってしまい勝負を受けることにした。この時の俺は航が頼む事なんて所詮エロ本貸してくれという安易な願いだろうと高をくくっていた。俺たちの番が近づくとお調子者の航がクラスの男子に勝負の内容を大声で話し出した すると皆が盛り上がり一気に俺たち2人の競争に注目が浴びることになってしまった。 大事になった俺は絶対に負けられないと心に決めスタート台へ上がった。 そのとき俺は極度の緊張で胸の鼓動が早くなるのを感じ次の瞬間、体育教師が鳴らすホイッスルの音を聞き勢いよくプールへ飛び込んだ。 無我夢中で俺はゴールを目指し泳ぐとプールサイドからクラスメートの大きな歓声が上がった。両者1歩も譲らない戦いを披露するとゴールが近づくにつれ周りの声援もヒートアップしてきた。 俺がゴールの壁に手を付けた瞬間周りから大きな拍手が送られた。俺は濡れた手で顔の水を払い瞼を開くとすでにゴールをして喜んでいる航の姿が視界に飛び込んできた。 俺は少し悔しい気持ちでいたが潔く負けを認めた。 「彼方俺が勝ったんだから1つだけ言う事聞いてもらうぞ」 「はいはい分かったよ」 そう言うと航はニヤリと笑い俺を見つめてきた。その時の俺はこれから起こる出来事を知る余地もなかった。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加