第2話 告白

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第2話 告白

航との水泳対決は俺の負けで幕を閉じた。その日の放課後航はニヤニヤと笑いながら俺に近づき一緒に帰ろうと誘ってきた。まだ強い日差しが差す夏の夕刻に俺と航は通学路の下り道を歩いていた。 その時の俺は 「エロ本を貸せ」 と言うのだろうと予想していたが帰り道で航は俺に思いもよらない事を口にした。 「なあ今日の水泳競争の約束だけど」 「どうせエロ本貸せって言うんだろう? 」 「はあ? 俺がそんなこと言うと思ったか? 」 俺は航の意外な返答に驚いた。すると航は 「ニヤリ」 と笑みを浮かべこう切り出した。 「うちのクラスに宮下遥香って言う女子がいるの知ってるか? 」 「ああ、なんとなく…… 」 「大人しい奴でいつも1人で本を読んでいる女子だ」 俺は航の話を聞いているうちにうすうすと予感した、宮下の存在は知っていたが入学してから1度も俺は話したこともなく目立たない奴だったので顔もハッキリと思い出せなかった。俺は 「まさか? 」 と思いつつ航に疑問をぶつけた。 「まさか宮下に告白しろって言うのか? 」 「ピンポーン」 航はニヤリと不気味な笑みを浮かべて答えた。俺は航のふざけた指令に納得がいかず反論をしたが航は頑として折れなかった。航曰く俺が色んな女子から告白を受けて断っているので、逆に俺が周りから見たら不釣り合いだと思う女子に告白をさせて、フラれるところが見たいと言うことだった。今思えば航が考えそうな馬鹿な指令だなと思った。 「どうせ俺が告白してもフラれるのがオチだぞ! 」 「いや分からないぜ案外いけるかもよ(笑)」 航は心にも思っていない事を言うが俺は約束をしてしまった以上、俺のプライドとして受けることを承諾した。ちなみに俺は昔から約束を破ることや中途半端で投げ出すことが嫌いだった。 航もそんな俺の性格を知っているせいかあえてこんな指令を下したのだろう。 そんなたわいもない会話をしながらいつもの航と別れる分岐点に到着すると 「じゃあ頑張れよ、俺はシャイなお前に彼女が出来るのを応援してるんだからな」 航は俺の左肩を2回軽く叩き足早に立ち去ってしまった {どうせ心にもないこと言いやがって…… } 俺は夕日を背にしながら自宅へ向かった。その晩は何も気にもせず 「サクッと告って終わらせよう」と安易に考えていた。 翌日俺が登校し教室に入ると周りがざわつきだし友人達が早速、宮下に告白することを聞いてきた。航がクラスの男子に告白することを言いふらしたせいで話題になってしまったのだ。 俺はコッソリと告白してやり過ごそうと計画をしていたが航によってその計画は無残にも打ち砕かれてしまった。 航がニヤニヤと笑いながら俺の席に来て 「よし今日の放課後に覚悟を決めて宮下へ告白をしよう」 俺はやる気のないだるそうな表情で 「今日は部活だからまた今度な」 と答えると航が 「少しぐらい大丈夫だろう? 俺たちが見届けてやるからさ」 部活を理由に交わそうと試みたがあえなく失敗してしまい俺は、遂に腹を決めて宮下に公開告白をする流れになってしまった。今思うとタダのノリで言ったことが俺にとって人生の転機になるとは想像してなかった。 暫くして冷静さを取り戻した俺は授業中ずっと憂鬱な気分にさらされていた。その日は授業に集中できず前の席に座っている宮下の事を何度もチラ見していた。 そしてついに恐れていた放課後がやって来た。俺は逃げるように教室の後方からを忍者秘伝の忍び足で逃げようとしたが航とその他が笑みを浮かべながら出口を塞いでいた。 「彼方君そろそろお約束のお時間ですよ~ 」 俺は観念して航達に付き合うことにした。航の話によると宮下は放課後いつも屋上で本を読んでいることが多いと言う、航の情報収集能力には感心させられ俺は航達に引っ張られ屋上へと連れていかれ1歩ずつ階段を登るたび俺の鼓動の波は早くなりまるで死刑が執行される囚人のような思いだった。 屋上に着き扉を少し開け隙間から覗くと屋上の日陰で読書をしている宮下の姿が確認できた。 宮下の姿を確認した俺たちは 「よし情報通りだ、彼方頑張ってこい」 航達に背中を押される形で俺は獣の折に放り投げられるような気分で屋上へと出された。この時俺の緊張は頂点に達していた。 俺は遂に覚悟を決めて宮下の元へ向かった。俺が近づいても彼女は読書に夢中で俺の存在を気づいていなかった。少しずつ歩み寄りついに彼女の目の前に着いた俺は…… 「あの宮下…… ちょっといいかな? 」 俺が緊張した面持ちで話しかけると 彼女がゆっくりと俺の方へ顔を上げ初めて宮下の顔を間近で見た俺は心に強い衝撃を感じた。彼女はツインテールでメガネの似合う童顔でまさに俺の理想のタイプだったのだ。 「星野君だよね? どうしたのかな? 」 「実は宮下に話があって来たんだが…… 」 この時の俺は一目ぼれをしてしまい緊張のせいで何を言えばいいのかわからず話題に苦労をしていた。すると不甲斐ない俺の背中を押すように涼しい夏のそよ風俺たちに吹き遥香が読んでいたページが捲られ花柄のしおりが飛ばされてしまった。 彼方は飛ばされたしおりを拾ってあげ遥香に渡した。 「ありがとう」 遥香は俺にあどけない笑顔でお礼を言ってくれた。 {可愛いなぁ俺本気で惚れしまった…… } 俺は何とか話題を考えた挙句に聞いた質問が 「宮下は読書が好きなのか? 」 彼方が本に興味があるそぶりを見せつつ質問をすると遥香は嬉しそうに 「うん大好きだよ」 遥香はニコッと笑みを浮かべて答えた。正直言うと俺は読書に興味が無く特に気に留めてはいなかったがこの時の俺はどこで告白をしようかタイミングを見計らっていると 入り口の方から航達が 「早く言え! 」 とジェスチャーで伝えてくると俺は少し焦ってしまい次の瞬間、宮下に告白をした。 「急にこんなこと言って悪いんだが宮下俺はお前に一目ぼれした。だから俺と付き合ってくれ」 俺は渾身の力を振り絞って遥香に告白をすると…… 「私なんかに告白してくれるのは嬉しいけど私とでは星野君とは釣り合わないわ」 「そんなことないぞ! 」 「ありがとうでも私は恋愛経験がないし」 「そんなの関係ないさ! 」 「ありがとうでも星野君の事まだ何もわからないし、今日初めてお話ししたのでお友達でいましょう? 」 俺は人生で初めて自分から真剣に告白して初めてフラれると言う人生最大の敗北を味う事となった。 俺は何とか平静を装いながら 「そうだよな変な事言ってごめんな。じゃあ今度お友達としてもっと小説の話を聞かせてくれ」 彼女は笑顔で答えてくれた。とりあえず彼女に部活へ行くことを話この場を去ることにした。 屋上の扉を開け校舎の中へ戻ると笑いを堪える航達の姿があり俺はショックを隠し切れずにた 「まあドンマイ気にするな、どうせネタで告ったんだからさ」 俺の気持ち察することなく話す航に対し俺は 「殴ってやろうか」 と心の中で呟いていた。 その日の練習はもちろんフラれたショックで集中することが出来ずミスを連発してしまった
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