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第3話 青春って何だ?
遥香に告白をしてから数日後、俺はフラれたショックにより授業はおろか期末試験に集中することが出来ずにいた。もちろんテストは大惨敗という結果だったが元々俺は勉強の方が昔から出来る方ではなかった。
その時のテスト上位成績第3位に遥香がランクインしておりそれを見た俺は、改めて遥香の凄さを知らされた
しかしあの告白事件をきっかけに俺と遥香の関係が微妙になってしまった。なんと言うか
彼女を見ると気まずく恥ずかしい気持ちになる。遥香は気を使ってくれているのか廊下ですれ違うと
「星野君おはよう」
俺は遥香を見ると周りの目を気にしてしまい何もしゃべれなくなってしまっていた。と言うか猫に睨まれたネズミの様に逃げてしまう。
その後も遥香は気を使って俺とすれ違うたびに
「星野君今日も部活頑張ってね」
俺はこの日無言で立ち去ってしまった。更には遥香と教室の入り口でタイミングが重なり遥香と顔が再接近すると。
「あ宮下…… 」
「星野君大丈夫? 顔が真っ赤だよ」
「大丈夫だ…… 多分」
俺は倒れてしまい航たちに担がれて保健室へ連れていかれた。
そうこうしているうち遂に待ちに待った夏休みに突入した。
しかし俺は期末試験の成績が悪かったため、夏休み開始と同時に追試試験を受けさせられるハメになってしまう。俺は特に国語が苦手で現代文の追試に苦戦を強いられていた。
現代文の先生はベテランの女性の先生で文芸部の顧問でもある。そんな先生は追試に厳しく
「星野君はキチンと合格するまで部活禁止ですからね」
俺は何度も追試を受けるがなかなか合格できずにいた。そんなある日の晩、航から電話が掛って来た。
「よう彼方、追試の方どうだったんだ? 」
「現代文がどうしてもだめなんだよ。他は何とか答え暗記してやり過ごしたけど」
すると、航がある提案をしてきた
「じゃあ宮下に教えてもらえば? あいつウチのクラスで成績トップだったし」
俺は航の非現実的な提案を拒否した。
「はあ? この前の事があってそんなの頼めるかよ」
「でもあいつ現代文満点だったぜ」
「他に誰かいないのか? 」
「残念だが俺は無理だぞギリギリ合格したんだからな」
「誰もお前なんかに聞いてねえよ」
俺はこの前のお返しも含めて皮肉を込めて言ってやった。しかしいざ助けてもらえそうな人物に心当たりがなく俺は遥香に頼む事を決断した。
「仕方ないが宮下に頼むしかないな。でもあいつの連絡先なんか分からないぞ」
すると航が
「ふふふこの航さまの情報網を甘く見てもらっては困るぜ。学校では情報屋の航さんで通てるんだからな。実はあいつ学校の図書室に通っているらしいぜ」
「お前は一体何処からそんな情報仕入れるんだよ。ストーカーじゃねえのかよ気持ち悪い」
俺はいつもの様に航をからかった。しかし今は夏休み期間中だし他の生徒も少ないため周りの目を気にすることもないと思ったのと
他の人に頼めるあてもないのと一刻も早く追試をクリアして部活へ復帰したいと言う思いが強く頭の中をよぎると俺は早速、明日学校の図書室へ行き遥香に勉強を教えて貰うことにした。
翌日俺は早速学校へ向かうとセミの鳴き声だけが響く校門の前で一人携帯をいじりながら航が立っていた
「よう彼方お前ひとりじゃ不安だと思って俺が付き添ってやるよ」
このとき俺は心底こいつが将来ストーカーにならない事を願った。俺は航に案内されるカタチで静かな廊下を歩いて図書室へと向かった。
しかし俺の心拍数は図書室が近づくにつれ上昇していった。
俺と航は、図書室の前に着くと俺の鼓動の速さは、限界を超えており今にも緊張で倒れてしまいそうだ。しかし航はそんな俺の事なんか気にすることもなく意気揚々と図書室の扉を開けようとすると、航がドアノブに手をかけようとした瞬間
ガラガラガラ
「それじゃこの本借りて行きますね」
タイミングよく図書室から出てくる遥香と俺が向かい合わせで最接近した。すると俺は遂に限界に達してしまいその場で倒れてしまった。
意識が朦朧とする中で航が俺を保健室へ運んでくれた。
そしてしばらくすると夢の中でか細い天使のような優しい声が聞こえてきた。
「ねえ大丈夫? 起きて……」
俺はその天使のような優しい声に誘われゆっくりと瞼を開けると視界の目の前には……
「良かった心配したんだからねカ・ナ・タ君」
そこにいたのは天使じゃなく航と言う悪魔だった。俺は航に怒りをぶつけるとベットの横で心配そうな顔で見守っている遥香の姿が目に飛び込んできた
「良かったわ、この前も急に倒れたから心配したんだよ」
「俺はどうしてここの? 」
「日下部君がここまで運んでくれたの」
遥香は俺の元気な姿を見てニコリと可愛い笑顔でほほ笑んでくれた。俺は心の中で「マジでかわいい~」と叫んでいた。
「感謝しろよ俺が運んでいなかったら今頃どうなっていたか分からないぜ」
航は俺に対して恩着せがましく話す。確かにこいつは普段お調子者だが俺が本当に困っているときはいつも助けてもらっている。俺は照れくささを堪えて素直にお礼を言った。
「航ありがとな」
航のおかげで場が和み楽しく会話をしていると、若い保健の先生がやってきて
「すっかり元気になったじゃん」
「先生ありがとうございます」
「まさか2度も極度の緊張で倒れるなんていいね青春してるんじゃん」
俺は保険の先生に事実を暴露されてしまい顔を赤く染め遥香の事を何度もチラ見した。 俺の異様な行動を見た遥香は
「彼方君はなにか悩み事があるんですか? 」
意外にも遥香は天然な所があり、俺はほっとしたが次の瞬間いつものお調子者航が……
「前にも聞いたがこいつが緊張した理由は」
俺はとっさの判断で航の口を手で塞いだ。遥香の事で緊張したことをバラされたくなかったからだ。俺はとっさに言い訳を考えた
「実は現代文の追試が合格できなくて、それで参ってストレスになったんだよ。なあ? 航」
俺は航を鋭い形相で睨みつけると、いつも空気が読めない航でも様子が違うと察し俺の話に合わせてくれた。航はうまく俺が追試に合格できなくて部活に行けないことを悩んでいて何とか勉強を教えてくれと頼んでくれた。
「私でよければ是非、星野君の手助けになれるように頑張るね」
俺は遥香の天使のような笑顔を見て再び顔を赤く染めた。すると今度その様子を見て敏感に察した保険の先生が耳元で呟いてきた。
「星野君は彼女の事好きなんでしょ? 何かあったらお姉さまに相談しなさい。個人的にレクチャーするわよ」
俺は保険の先生の申し出を丁重に断り保健室を後にして3人で図書室へ向かうこととなった。
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