第4話 2人の距離

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第4話 2人の距離

早速俺たち3人は図書室で現代文の追試対策を開始した。図書室に入るとクーラーが効いておりヒンヤリと心地よい風が俺たちを出迎えてくれた。俺は早速返された答案用紙を2人に見せた。 「星野君はどちらかと言うと長文問題が不得意なのかな? あと漢字の書き取りも」 「漢字は見れば分かるんだけど、いざ書けって言うとなかなか難しくて、なんていうか携帯で変換したのは分かるけど」 「俺もその気持ち分かるわ、それが現代社会の問題だよな。便利な世の中の落とし穴って言うか」 航は便利な社会のせいで若者の漢字能力が低下したという持論を展開した。 「漢字は練習すれば覚えていくから対策はできるけど、問題は長文問題よね。この作品の意図や登場人物の気持ちなどを理解しないといけないことがあるからね…… 」 「俺も確かに苦手だな、だって他人の気持ちなんか分からないぜ。分かったら苦労しないで女子と仲良く出来るだろう? 」 この時俺は航に対してこいつが何で女子にモテないのかを確信した。やっぱりこいつは空気を読む事が出来ないんだなと思ったからだ。 「確かに作品を理解するって言うのが俺には難しくて理解できないんだ。宮下は何かいい方法ないか? 」 遥香は眉間にしわを寄せながら考えるとある提案をした。 「すぐに点数が上がるわけじゃないけどやっぱり確実なのは本を読む事かな」 俺は遥香の提案を聞くと心の中で 「めんどくさい」 と思った。なぜなら俺は読書が大嫌いだからだ。 あのチマチマとした文字を順番通りに読むという作業が大雑把な性格の俺にとっては、苦痛で仕方ないからだ。 すると航がいつもの調子で話し出した。 「ダメだよこいつは、読書苦手で漫画だってセリフ読むのめんどくさいって言うぐらいだぜ」 「お前はどちらかって言うと空気読んだ方がいいぜ」 「あははは確かにそうだよな~」 「クスクスクス」 俺たちのやり取りを見ていた遥香が小さな声で笑った。だが今回は何としても早く合格すると言うのが目標だったので遥香は今回のテストの答えと対策方法を教えてくれた。 そして対策開始から約1時間が経過し航も2人が真剣にテスト対策をしているのを見て珍しく空気を読み 「なんか2人で真剣に頑張っているから俺は先に帰るぜ。じゃあ頑張れよ」 そう言い残し航は図書室を後にした。 航にしては珍しく空気を読んだと思い少し見直した。それからも遥香は親身になって勉強に付き合ってくれた。 「とりあえず作品の結論を答えるときは、だいたい最後の方を見ると答えになる文章があるからね」 「なるほど俺は今まで最初の方しか見てなかったから解らなかったよ」 その後も遥香は何度も回答を間違える俺に対して、嫌な顔を見せずに親身になって付き合ってくれた。心の中でますます遥香の事を好きになっていった瞬間だっだ。 そして気づいたらすっかり時計の針は夕方5時を指しており、今日の勉強を切り上げることにした。遥香は明日もテスト対策に付き合ってくれると言ってくれ、とりあえず俺たちは途中まで一緒に帰ることにした。 帰り道では趣味の話や先生の物まねをしながら楽しく談笑したおかげで、少しずつ緊張がほぐれ自然に遥香と話をすることが出来るようになっていた。この時の俺は心の中であることを考えていた。 駅前の十字路に差し掛かりお互い家が別方向だったのでココで別れることにした。その時俺は緊張した面持ちで勇気を振り絞って遥香にあるお願いをした。 「宮下…… あの…… その…… 連絡先教えてくれ! 」 このときの俺は緊張しすぎて周りの通行人の目などを気にせずどもりながらお願いをした。すると一瞬の沈黙が起きると俺の心の中で 「絶対に嫌われた」 という気持ちになった。 しかし次の瞬間 「うんイイよ」 遥香は嫌な顔せずに俺との連絡先を交換してくれた。俺は交換するとき緊張のあまり手が震えてなかなかバーコードリーダーを読み取ることが出来なかった。 「ありがとう。じゃあ何かあったら連絡するよ」 「うん気にしないでいつでも連絡してね」 こうして夕日を背に帰宅の途に就いた。その夜携帯画面に映し出される遥香の連絡先を見ながらベッドの上で横になりながらニヤついているとタイミングよく航から電話が来た。 「あの後どうだったんだ? 」 「夕方まで付き合ってくれたぞ。明日も付き合ってくれるみたいだ」 「へえ~すげえじゃん」 「因みに宮下の連絡先聞いたぞ」 「マジか! 俺なんか女子の連絡先なんか1つもないぜ。女の連絡先なんか母ちゃんと妹だけだし…… 」 その後、航のモテない悩み話を永遠と2時間も聞かされる羽目になった。
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