第6話 作戦会議

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第6話 作戦会議

遥香をデートに誘うことに成功した俺は、週末が来るのが待ち遠しかった。 だが俺には1つ不安があった。それは女子とデートをしたことがなかった。 次第に俺は不安に駆られ当日うまく遥香を楽しませることが出来るのか? と考えてしまい日を追う事に不安な気持ちが風船の様に大きく膨れ上がっていった。 ある夜俺は携帯を手に取り登録してある電話帳をスクロールするが、恋愛術を相談できる相手などいるわけがなかった。俺の周りに集まる奴は、恋愛相談はおろかまともに女子と話したりできる奴さえいないのだ。 俺が困っているときにいつも相談に乗ってくれるのが「航」なのだが…… 日も迫っていたため背に腹は代えられず俺は、藁をもすがる想いで航に電話をかけた。 プルルルル 「はいもしもし」 「おい航か? 実は相談に乗ってほしいんだが」 すると航が全て見通しているかのような口調で話しだした 「はいはいはい遂に面白いネタ来ました。最近2人で一緒に下校しているみたいじゃないか? 噂になっているぜ」 ニヤりといやらしい顔で笑う航の姿を想像した時、こいつに電話をした事を後悔するも情報のリサーチ力の凄さにも驚いた。しかし一刻を争う事態なのでここは俺が大人になり航に相談をお願いした。 「頼むこんな事相談できる奴はお前しかいないんだ、一生に一度だけのお願いだ」 「ああいいぜ、お前と俺の仲だろ? 今からお前の家向かうよ」 航は、快くOKしてくれた。この時俺は航の事を今までの人生の中で一番尊敬することが出来ると思えたのだが…… 電話をしてから約1時間が経過し航は一向に現れず、俺が少しシビレを切らしていると何やら外で数人の若い男連中の会話が聞こえてきた。俺が部屋の窓を開けて耳を澄ましていると 「航マジか? 彼方があの宮下遥香と付き合っているのかよ? 」 「あああいつマジで惚れているみたいだぜ。今日は面白い話が聞けるぞ」 航はいつもつるむ悪友を誘っていたのだ。静寂な夜に耳障りな会話の内容がよく聞こえ俺は、航に相談したことを悔やむと同時に、少しでも航を尊敬した自分に対して怒りを覚えた。 そうこうしていると航達は、両手に大量の飲み物とお菓子などが詰まったコンビニ袋をぶら下げて部屋に入って来た。俺の顔を見るなり不気味にニヤつくと俺は心の中で 「こいつ絶対に楽しんでやがる」 と実感した 航達はテーブルを囲むように座ると買ってきた飲み物などを袋から取り出しお茶が入ったペットボトルをマイクに見立て喋りだした。 「え~本日は皆さん星野彼方君の交際会見にお集まりいただき誠にありがとうございます」 「何だよ記者会見って…… 交際してないぞ、勝手に決めつけるな」 俺はつかさず航にツッコミを入れるとメンバーの一人が乾杯の音頭を取りまずはテーブルの上にランダムに並べられているジュースを手に取り乾杯をした。 俺は航になぜ他の奴らを連れてきたのかを問い詰めると 「だって他の奴らの意見も聞いた方がいいと思ってよ。それにこいつらだってお前の事を心配しているんだぞ」 俺は航の話を信じていなかった。何故ならどうせこいつらは航が面白可笑しく話して煽って集めたに違いないと思ったからだ。 しかしもう取り返しがつかないので俺は今までの経緯や土曜日にデートをすることを話した。そして人生初めてのデートの為どうこなせばいいか分からず悩んだ末、航に相談をした事を説明した。 俺が真剣に悩みを相談したので意外にも航達は、真剣に話を聞いてくれた。そして話し終わると部屋のクーラー音だけが響く沈黙の時が流れた。すると航が沈黙を破って口を開いた。 「とりあえず俺たちも恋愛経験0だからアドバイスをすることは難しいが、いいもの持ってきたからお前に渡すぜ」 航はカバンの中からある一冊の本を取り出して俺に渡した。本の表紙には 「モテる男のテクニック100選」と書かれていた。 「妹が誕生日プレゼントでくれたんだよ。でも全然効果がなかったからお前にやるよ」 航のその言葉を聞いて愕然とした。試してもダメな本を俺に渡すなんてサジを投げられた気持ちだったからだ。俺は本を読むのが苦手だがこうなったらイチかバチか藁にもすがる想いで本を頼ることにした。 結局その後はいつもの様にどんちゃん騒ぎをされる羽目になり、辺りにはペットボトル容器とお菓子の袋が散乱する始末だった。その後友人たちは上機嫌で帰宅すると一人で渋々と部屋の片付けをこなしその日は就寝した。 その後は航から貰った本を読みながら当日の作戦を練ることにした。そしてデート前日の夜には航からガンバレと応援メッセージとスタンプが送られてきた。 あいつなりに心配してくれているんだなと思うと気持ちが落ち着き心に余裕が出来た。お陰でその日は明日の負けられない戦いに備え早めに就寝をすることが出来た。 そしてデート当日、朝から強い日差が差し午前中から蒸し暑かったが晴天に恵まれ絶好のデート日和となった俺は、早めに待ち合わせ場所の遊園地へ向かう事にした。 遊園地の入り口付近ではセミの鳴き声が響き夏休み真っただ中と言うこともあり早朝から沢山の人で賑わっていた。俺は、LINEを起動させ遥香に着いたことを報告するとすぐに返事が返ってきた。 俺は人混みかき分けながら遥香が待っている券売所付近へ向かうと純白のワンピースを着た遥香を発見した。 「悪いな待たせたかな? 」 「うん大丈夫だよ。今来たばかりだから」 俺は、初めて見た遥香の私服に心がときめいていた。何故なら夏のそよ風に包まれたワンピース姿の遥香はまさに天使のように思えたからだ。 俺は早速券売機で2人分の入場券を購入しいざ改札口へ向かおうとしたその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「お~い彼方、待たせたな」 俺は恐る恐る後ろを振り返ると満面の笑みで俺に手を振る航の姿が視界に入った。俺は唖然とした顔で立ち尽くしていると…… 「いや~すげえ混んでいるな。今日は俺がお前の事を援護射撃してやるから安心しろよな」 「お前空気読めよな。デートなのに何でお前がいるんだよ」 すると航が俺の耳元でつぶやいた。 「お前を引き立てるために俺はある作戦を立ててきたんだよ。絶対に大丈夫だから大船に乗った気持ちでいろよな」 航に空気を読んでもらうこと自体が間違いだと気づいた俺は、心の中でデートの敗北宣言をしていた。 しかし遥香が 「でもせっかく日下部君も来てくれたんだし3人で一緒に楽しもう」 遥香の提案に少し救われた気分だった。俺の不安を後目に航はいつものノリではしゃいでいた。 俺は航が考えたある作戦が気になりつつもとりあえず遥香とのデートを楽しむことにした。
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