第7話 想いを届け! 遥香の心にミラクルシュート

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第7話 想いを届け! 遥香の心にミラクルシュート

早速俺たち3人は遊園地のゲートで手続きを済ませ入園すると、園内は夏休みともあって学生連中や家族連れが多く目立ち、既に人気アトラクションには長蛇の列が連なっていた。 俺たちはゲートでもらった地図を頼りにどのアトラクションへ向かうかを話し合うと 「よし、まずはゲームコーナー行こうぜ」 「それは却下だ。それならお前ひとりで行けばいいだろ」 「ちぇ、つまらないの」 「宮下は何が乗りたいんだ? 」 「私はやっぱりジェットコースターかな」 俺はまさか遥香からジェットコースターに乗りたいと言われた事に度肝を抜いた。俺と航は顔を見合わせアイコンタクトを取る。 俺と航は絶叫マシンが大の苦手だった。俺は何とか比較的に安全なメリーゴーランドを提案するが、遥香はどうしても乗りたいとお願いをされる。そんなやり取りを横で見ていた航が…… 「おい彼方、お前さっきゲームコーナー行けって言ったよな? 俺ちょっと行ってくるぜ」 「お前逃げるのかよ。サポートはどうしたんだ? 」 すると航がソワソワした様子で俺の耳元で呟いた。 「俺マジでダメなんだよ、俺はともかくお前は行かないとだめだぞ。ここがまず見せ所だ」 俺達が擦り合いをしていたので遥香が俺達に気を使ってしまい。 「もしかしてジェットコースター嫌だったかな? 無理しなくても大丈夫だよ」 「大丈夫だよ。だってこいつ絶叫マシン子供の頃からめちゃくちゃ好きだって言っていたし」 航は俺が絶叫マシンに乗るのが大好きだと勝手な事を言われ、俺はこのままでは自分の身に危険が及ぶと思い慌てて抗議をする 「お前いい加減なこと言うなよな」 「バカ、あそこで断ったらお前の株は大暴落だぞ。ここは頼りがいのある男性っていうのをアピールするチャンスだぞ」 確かに航の話を冷静に聞いていると正論だと思った。ここは航に言われた通り腹をくくってジェットコースターへ乗ることを決意した。 俺が遥香とジェットコースターへ向かうと航はイヤらしい笑顔で手を振って見送った。この遊園地のジェットコースターは高さと恐怖感を売りにしている名物マシンだ。 そのため俺は列に並び順番を待つ間、遥香に平静を装いつつも会話を盛り上げた。しかし順番が近づくにつれて俺は、極度の緊張に襲われてしまう。例えるならば死刑囚が死刑執行される寸前の気持ちだ。 遂に俺たちの順番が近づき、いざジェットコースターへ乗り込んだ時に俺はとっさに隣に座っていた遥香の手をギュッと握っていた。 緊張で汗ばんだ手を優しく握り返してくれる遥香の手に、温かさを感じ少し安堵した俺だったがいざ動き出すと 「ぎゃー殺される! 助けてくれ! 降ろしてくれ! 」 俺は周りの目を気にすることなく大声で悲鳴を上げた。そして数分後、無事到着した俺の足はおぼつかなくまともに歩くことができなかった。遥香が俺の様子を見て 「星野君大丈夫? 」 するといいタイミングで景品のお菓子を大量に抱えて満面の笑みで近づいてくる航が俺に駆け寄ると 「おい大丈夫か? 」 「何とか生きてる…… 」 「ごめんね、次は緩い乗り物にしようか? 」 申し訳なさそうにつぶらな瞳で見つめる遥香の姿を見て、航がまた調子のいいことを口にした。 「大丈夫だよ。だってこいついつも絶叫系ばかりしか乗らないんだぜ」 「お前なあ…… 」 俺は、ジェットコースターに酔ってしまい怒る気力も無かった。すると航が俺の耳元で助言する 「ここで彼女を心配させるなよ。お前の男らしさをアピールする所だぞ」 モテない航にしては、また正論を語りだした。そして俺は気力を振り絞り 「よっしゃあ、俺は大丈夫だ。だから宮下の好きなところに行くぞ。絶叫マシン全制覇でもいいぞ」 俺はこの時まんまと航の調子に乗せられてしまい、自分でもおかしい方向に向かっていた。 遥香は俺の元気な様子を見て安心した。 おかげで俺は幸せそうな笑顔で楽しむ遥香を喜ばせるために、ありとあらゆる絶叫マシンを乗せられる羽目になった。 この時の俺は初めて子供らしく無邪気に楽しむ遥香の姿を見ることが出来て、最高の気分になるはずだった…… が 「うえ~やべえマジ気持ち悪い。もう勘弁だ…… 」 俺の身体は傷だらけのボクサーの様にボロボロだったが 「おい見ろよ、さっき景品で昼食無料券貰ったぞ。」 航のナイスなコーナーパスに俺達は喜んだ。こいつのくじ運は昔から強く、よくお菓子のあたり券とかを引くことが多かった。 俺は航への怒りを忘れ3人で貰った無料券を使い食事をとることにした。食事中も航は頑張って幼少時代の面白い思い出話で場を盛り上げてくれた。 この時俺は航に対して感謝の気持ちでいっぱいだった。こいつなりに盛り上げて俺の事をアピールしてくれた事が嬉しかった。遥香も楽しそうに話を聞いてくれた。 そして一通りの乗り物を乗り終え、遊園地を満喫していると気づいたら日暮が鳴き空も綺麗な茜色に染まり、朝の混雑時とは違い客足もまばらになりつつあった。 普段はこの時間になると閉園してしまうのだが、夏休み期間中は夜のイベントとして花火を打ち上げるという。 俺達は花火が見える広場に向かうと見物客でごった返しており、座るスペースを確保することができず仕方なく他に座れる場所を探そうとすると航がある提案をした。 「花火がゆっくり見物出来る穴場スポットを聞いたから案内するよ」 俺たちは航の案内で園の奥にある小さな広場へ向かった。航によると前もって知り合いから情報を仕入れてくれていたみたいで、確かに聞いた穴場スポットに着くとあまり人がおらず、うっすらと外灯の明かりに照らされた小さな芝生とベンチがある広場へ着いた。 「ここならゆっくり見れるだろう? 」 航が俺と遥香をベンチに座らせると 「確かにここなら見れるな。お前すげえな」 「そろそろ始まるわ」 すると花火の開始時間、間際になると急に航が 「俺この後、用事があって帰らないといけないから2人で花火楽しんでくれ」 航が俺を奥へ引っ張った。 「彼方、後はお前次第だ。健闘を祈るぜ」 「お前その為に気を使ってワザと帰るって言ったのか? 」 「そうだよ、これが俺の作戦だ。しっかりあいつの心にシュートを決めろよ! 」 航は笑顔で俺の肩をポンポン2回叩くと、俺達に笑顔で手を振りながら別れを告げながら足早に立ち去った。この時俺は航に対して感謝の気持ちでいっぱいだった。 今まで空気の読めない馬鹿だと思っていた俺が恥ずかしく思えた。 その後、日が落ち辺りが暗くると遂に爆音を響かせながら夜空に花火が打ち上げられた。 俺と遥香は夜空に舞う花火に感激した。そしてついに俺は緊張した面持ちで遥香に想いを告げた。 「なあ宮下。俺が初めて宮下に話しかけてから色んな事があったな。追試の勉強を見てくれたり一緒に部活終わりに帰ったり」 すると遥香も少し緊張した様子で語りだした 「私も始めて話したときはどう接すればいいか悩んでいたけど今は一緒にいてとても安心できるし楽しいよ」 今までの出来事が俺の脳内でドラマの総集編の様な映像が流れた。俺は緊張感に包まれながらも夜空に打ち上がる花火と航の言葉に背中を押され、ついに俺は遥香に想いをぶつけた。 「宮下…… いや、遥香。俺はお前のことが本気で好きだ。初めて話した時から本気で好きだった。一緒に帰った時、俺が追試勉強に苦戦しても優しく付き合ってくれた優しいお前が好きだ」 「星野君…… 」 「俺はお前の好きなところ100個も言えるぞ。メガネが好きだ、性格が好きだ、可愛い笑顔が好きだ、雰囲気が好きだ、髪型が好きだ、純白のワンピースが好きだ、それから…… 」 「それから? 」 「宮下春香、お前が一番大好きだ! 」 俺はこの時、周りに誰もいないことから恥ずかしさを忘れ、遥香に想いの丈を全てぶつけた。 その時、花火が俺たちを祝福するかの様にメインの巨大花火が打ち上げられ夏の夜空を綺麗に輝かせた。 俺が想いの全てを語り終えると遥香の目から涙がこぼれ薄紅色の頬を伝った。 「こんなに私の事を真剣に想ってくれる人に告白されたのは初めてでとても嬉しいわ。こんな地味な私だけどよろしくお願いします。」 遥香は頬を涙で濡らしながらもニコッと愛らしい笑顔を俺に見せてくれた。 こうしてついに遥香と無事に交際をすることが出来た俺は、心地よい夜風に当たりながら2人で手を繋いで遥香の自宅付近まで送ってあげることにした。 これが俺と遥香にとっての忘れられない運命の日になり、これから起こる俺の壮大な運命の物語へのスタートラインに立つことになる。 帰宅した俺は早速航に電話を掛け今日のお礼と遥香との交際を報告した。すると航は、俺以上に喜んで祝福してくれた。 「やったな。おめでとう、これから頑張れよ。俺も協力するからよ」 「ああ、ありがとう。お前には感謝している」 「俺も彼女ほしいな。宮下の友達紹介してくれないかな? 」 普段と変わらない会話をしながら航との電話を楽しんだ。今度は俺がこいつに何か恩返ししてあげたいと思った。しかしそんな気持ちが一瞬で打ち壊される出来事が起きた。 2学期の始業式に航は新聞部の知り合いを使い、俺と遥香が付き合った事を号外として全校生徒へ配っていた。 「号外だ! あの星野彼方にスキャンダルが発覚だ! 」 「お前スキャンダルってなんだよ! 」 「何を言っているんだ? インパクト強くしないと記事の面白さ出ないだろ? それにみんなに知ってもらった方が気にしなくて済むし、周りもバックアップできるじゃないかよ」 面白おかしく騒ぎ立てる航や悪友たちを見て俺は、航を尊敬したことへの前言撤回を心の中で叫んでいた。
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