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「大変だ!サツキがいなくなった!」 勢いよくスタジオのドアを開けて怒鳴りつける。それぐらいおれは焦っていた。 先に着いていたタチバナとツヅミがこちらを驚いた顔で見たが、すぐ準備に戻る。 「あんな女にタレたやついいだろ、邪魔だったからせいせいする」 「…ツヅミ!そんな言い方ないだろ!あいつがいなくなったらギターだってどうする!」 「ゆうすけがやればいいじゃん。僕ゆうすけのギター好きだからそれで構わないよ」 「そうさ。ゆうすけ、ボーカルギターできるだろ?」 タチバナはアンプにプラグを差し込みながら空気を悪くせず俺にそう提案すると、ツヅミもなぜか賛同し始めた。 はぁ?と俺が顔を訝しげに歪めると、タチバナは「来ないやつの事考えても仕方ないじゃん。時間ももったいないしはやく練習しよ」と俺の肩を叩いて、自分のベースを手に取り鳴らし出す。それにつられてチューニングを済ませたツヅミもタムをリズミカルに叩き始めた。 ギターがいないことに何も疑問を抱かない2人は、茫然とする俺を置いて練習を開始してしまった。
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