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21歳男子大学生ゆうすけはロックが大好きで、自分が集めたメンバーでバンドをやるのが幼い頃からの夢だった。
高校生は軽音をやれる環境ではなかった俺は、暇を持て余した大学生になった瞬間、バンド仲間集めに奮闘した。結局は約2年半かかってしまったが、腕のいいメンバーを3人集めることができた。リーダー兼ボーカル俺をはじめとしてギターのサツキ、ドラムのツヅミ、ベースのタチバナでバンドは構成されている。それぞれ性格は様々でハプニングやトラブルも多かったが、なんだかんだ何度かライブで演奏することが出来た。バンドを組んでそろそろ10ヶ月経とうとしていたとき、サツキが急にバンドをやめると言い出した。
サツキは俺が一番はじめにバンドへ誘った男で、ギターの音色がものすごく好みだった。俺もギターを弾いていたが嫉妬したくなるほど彼のような旋律は奏でられない。腕前もそうだが、彼がおりなす独特な音色は俺らのバンドを象徴づけるには不可欠だった。
しかし、サツキはなぜやめると言い出したのか?
音楽性の方向の違いというよりは、人間関係という理由がピッタシだろう。
サツキは空気が読めて流されやすい人間だ。見た目も良く、普段ゆるい雰囲気を醸し出しながらもギターを弾けば圧倒的な迫力を魅せるギャップにやられない女はいなく、それはもうとてもモテていた。そしてここで肝心となってくるのが、サツキは流されやすい適当人間であったことだ。サツキは女の子を来るもの拒ず状態でタラし込む。サツキは別に性格が悪いというわけではなかったが、その生粋の天然バンドマン気質にタチバナとツヅミはあまり良い印象を持っていなかった。
その結果がさっきの二人のガン無視状態である。
今日はサツキがいない代わりのギターを、ボーカルの俺が弾いた。歌いながら弾くことはできることにはできたのだが、そのメロディはいつものレベル感に達さない。やっぱりサツキがいないとダメだな、なんて肩を落とした。
「ゆうすけやっぱり弾けたじゃん!ブランク空いてたとか言ってたけど全然良かったよ〜」
タチバナが親指を立ててニコニコ笑いかけてくる。
「タチバナ励ましてくれてありがと。でもやっぱりサツキじゃないとダメだわ〜」
「そんなことねえよ、ゆうすけにはゆうすけのメロディがあるじゃん。いつもと違くてこれはこれで俺はいいと思う」
あまり褒めないツヅミもそう俺に声をかけた。
(2人とも…)
暖かい言葉をくれる2人に泣きそうになり、涙腺を緩ませながら見つめる。
タチバナが明るい笑顔を見せ、ツヅミが頼もしげに笑った。
アイコンタクトで図って2人は"構え"にはいる。
いつでも来い。そう2人に言われているようだった。
「…よし!もっかいだ!」
心にやる気の灯火がついた俺はギターを大きく鳴らした。
*****
今日の練習はみっちりと行われた。いつもの気まずい空気はなく、和気あいあいとした達成感のある練習だった。
最寄駅についてタチバナとツヅミに手を振り、別れる。
(こんなに楽しい時間は久しぶりだった)
ゆうすけはまだドキドキとした胸の高鳴りにそう噛み締める。それと同時にサツキのギターの音が恋しくもなった。
(あの空間にサツキのギターがあれば…)
ゆうすけはそう考えずにはいられなかった。
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