物語は終わらない

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気持ち悪いほどの空気の抵抗力。 足が地に着く感じがせず、体がダラダラとゆられる。体全身が落ちていくのにふわふわとした心地はしなかった。 ものすごいスピードで落下し目まぐるしく景色がうつろ変わって行くが、1人ではなかった。 風でたなびく薄い茶色の柔らかい髪と涙で歪んだ美しい顔。 共に落ちていく美しい人間がやんわりと目を閉じた。 離しちゃいけないような気がして必死に手を伸ばす。 掴もうとした右手首の感触が来る前に、体中がひび割れるような鈍痛に襲われた。 硬い地面と柔らかい人間の体が嫌にぶつかる音が響き渡り、体が固く重くなっていくのを感じた。俺は最後に見た美しい横顔を脳裏に焼き付けては、ゆっくりと目を閉じた。
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