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終
「いい夢は見れた?」
ギシッとベッドがきしむ。
「…ぁ……っく……ぅ」
暗い部屋で、悲痛な歌声が響き渡った。
ギターが満足そうに弦を鳴らす。
声が次第に重なって、一つになる。
唇が離れると優しくゆうすけの髪が撫であげられた。
「ゆうすけは、どれが好きだったの?」
甘く囁かれた問いかけに、ゆうすけが重苦しい身体ごと持ち上げて、少し癖っ毛の後頭部を引き寄せる。
耳を近づければそっと楽器の名が吹き込まれた。
『×××』
ギターが大きく音を立てた。
「音色」ではない、ギターが倒れた音だった。
その音が消え失せる前に激しい衝撃音が響きわたる。重さのさまざまなものが壁にたくさんぶつかっていく音がして、一際重いものが傾いで鈍い叩音が床面に響き渡った。
パタパタと肌とフローリングがぶつかり、口への隙間が無くてくぐもらせたような声が反響する。
もみ合うような音が暗闇でしばらく繰り広げられていたが、布を破く音が天をつんざくように刃を立たせた途端、抵抗が急におさまった。
それを機に、パチ、と肌が触れ合った。ペタペタとゆっくり執拗に触れるその合間に布が深く擦れ合っては解いて、床へ次々と落ちていく。鼻がすするような声がしたが、数秒もたたないうちにこもった音になって静かになった。
1本の細い腕が力なく降り落ちた。
静まり返る部屋の床面に伝わっていく重くて激しい振動が倒れて不安定なギターをカタカタと震えさせ、暗闇に一つしかない陰が濃く揺れた。
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