ドア

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ドア

逢いたい気持ち隠して、男性は、恋に落ちた。ドアを、そっと開けてくれた、その日から。どうせ、破れる恋ならば、無理を承知で、とことん、当たって砕ける覚悟で、望んでいるのだろう。奇跡を信じて。通い始めて、まだ、一ヶ月。今からが、正念場。一週間後にすれば、早く、逢えるのに、男性は、十日後を、選んだ。様々な事情から。時は、流れ。その間。このまま、なにもなく、終る事も、一つの選択肢なのかもしれない。男性の頭の中では、思考だけが、行ったり来たり。こんな風になった事を、摩訶不思議だと思っている。偶然が偶然を呼ぶと、そんな出来事が、出来上がるのではないかと。まるで、さっきまで見えていなかった、虹が現れたかの用に。色彩鮮やかな、幻の色に、出逢ったかの用に。いつもとなにも変わらない日常の中に、そんな風が、吹いてきた。ある日の事だ。いつも通り、通院して、名前を呼ばれるまで、ソファーで待機をしていた。すると、僕の後から来た女性のお客様も、なぜか美しかったのだ。僕は名前を呼ばれ、いつも通り、診察台へ。その場所は、三つの診察台が、完備されている。真ん中の診察台にいる僕の左側に、その女性は座り診察を受けている。海外から帰ってきた、そんな世間話も聞こえてきた。背後にいたマスクの女性も、忙しそうに行ったり来たり、院内を、動き回っている。治療を終えた僕は、ドアの方へ。すると、マスクの女性は、そっとドアを開けてくれたのだ。僕は一礼をして、そのドアを閉めた。ひょっとすると、そのドアを閉めるのは、僕の方ではなく、マスクの女性の方でも、よかったのかもしれないなと、意味深な感覚に、心が揺らいだ。いつもと同じ名前を呼ばれ、会計をするその度、カレンダーを互いに、見詰め合う、その時だけが、変わった、約束みたいな、お伽話。男性は、また、十日後を、楽しみに、次の計画を、作り始めました。やがて、1年の月日は過ぎ、時だけが、経過したのであります。やがて、男性は、まだあの場所にいるのだろうかと疑問の日々を過ごす事になるのです。男性は、正直、時の流れで、頭の中は、爆発寸前。密かに、キスを夢見て、下半身だけが、勝手に向かうそうなのです。ある日の出来事。男性は、マスクの女性を尋ねて、ドアを開けにいってしまうのです。女神なのか。女神ではないのか。マスクの女性は、僕に名前を、繰り返し聞いてきた仕草は、忘れられていたんだ。そう判断に、決着したのであります。それでも、まだ、あの場所にいた事を、嬉しく思いつつ、まるで、時が止まっていたのかと、思う位に。二日間の、儚い夢の続きは、男性の頭の中では、既に、終りを迎えていて、諦める選択のドアをも、同時に、開いたのです。 
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