8月17日

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8月17日

 彼女が八人くらいになった。ここまで来ると何人なのかよくわからない。やたら会う頻度が多くなったなぁとは思うけど。  何にせよ僕の予想が正しければ非常にまずい事態に陥っていると言わざるを得ない。一定期間で数が倍に。何処かで聞いた話である。このペースで彼女が増殖を続ければ、日を重ねるごとに彼女の数は雪だるま式に、否、栗饅頭式に急増することになるだろう。そしていつかは地球の表面を削り取り、あらゆる生物を根こそぎにする。まあ、彼女に埋もれて死ぬというなら悪い気はしないが。  さらに追い討ちをかけるような事態がもうひとつ。 「あのー。聞いてます……」 「…………」  彼女達の機嫌が最悪なのである。増殖する彼女への対応を考えるばかりで、彼女達への応対をおざなりにしたツケが回ってきた。すぐにフラれてしまうということは無いだろうが。 「本当にごめんなさい……」 「…………」  ……万が一ということもある。仮に全員にフラれた場合、彼女はゼロ人になるから、増殖を食い止められる。ゼロに何をかけてもゼロだもん。  たしかに、そう考えることもできるかもしれない。しかしそれは運の良いケースであり、運が悪かった場合、数字の方にヘソを曲げられかねない。  1の二倍は2で、その二倍は4、さらに二倍は8で、8を二倍にすると0。などと数学に学習されてしまった日には、彼女が地球を埋め尽くすより先に人間が滅びてしまう。彼女と破局するついでに人類も破局を迎える。  慎重に行動しなければ。何とかして平和的に彼女を一人に戻す方法を探さなければならない。できるだけロケットに詰め込んで飛ばすような可哀想な手段はとりたくないのだが。
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