0人が本棚に入れています
本棚に追加
8月19日
「1,2,3,4……」
僕は部屋に次々訪れてくる彼女達の人数を一人一人数えていた。順番待ちの列は長い行列を成していて、アパートの外にまで及んでいた。一行三十二列。
しかし不思議なことに、道行く人は、同じ顔の人間が何人も整列している、世にも奇妙な光景にあまり関心がないようだった。
「……11,12,13,……」
なぜ彼女達の人数を数えているのかというと、今夜に決行される作戦の準備のためなのである。「逆立ち作戦」。日を跨ぐごとに二倍に増えるのならば、逆立ちをすれば二分の一になるじゃないという安直な発想から生まれた作戦。試す分には簡単で、変化が無ければまた考え直せばよいのだが、この作戦には欠点があった。
「やっぱり縦なんじゃないかな? そっちの方が均等だし」
「でも、横なら上だけで生き長らえらることができるよ」
「ならワンチャン……」
「君たち、他人事だと思ってない? そりゃあ被害にあうのは自分じゃないかもしれないけれど」
順番待ちをしている彼女達の話題はその欠点で持ちきりである。興味津々。そう、この作戦は偶数人で行われないと0.5人が出てしまうのだ。縦にパッカリ割れてしまうのかそれとも、横にスッパリ真っ二つになってしまうのか、どちらにしろ悲惨な結果が待っているのは間違いない。その悲劇を防ぐためにも、事前の人数確認を欠かしてはならない。僕は慎重に数えるのだが。
でも、どうなるのか僕もちょっと気になるな。
最初のコメントを投稿しよう!