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9月1日
目が覚めるとベッドの上にいた。ということは辛うじて認識できた。意識が視界とうまく同期しない。頭が重く、頭蓋の中に水銀が詰まっているみたいだった。身体を起こして数分待つ。目を開けると、元通りの光景が広がっていた。
いつもの日常に帰ってこられたらしい。
彼女のことが気になって、電話をかけようとしたが、携帯に連絡先が存在しなかった。彼女の家にも行ってみたが、誰も住んでいない。もぬけの殻だ。この世界から彼女はスッキリいなくなってしまった。
やはりあれはただの夢だったのだろうか。そもそも最初から彼女は存在しなかったのでは……
ジャリ……
足の裏に異変を感じる。足をあげるとリンゴの種をふんずけていた。鮮やかな水色だった。
頭の中の靄がはれた。周囲のどんな異変も見逃すまいと目を凝らす。
もう一度あの異常を見つけてやろう。
そして記憶を保ったまま何度も世界を移動し続けるのだ。またどこかで会うことだってできるだろう。あんなに沢山いたのだから。
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