9月1日

1/1
前へ
/7ページ
次へ

9月1日

 目が覚めるとベッドの上にいた。ということは辛うじて認識できた。意識が視界とうまく同期しない。頭が重く、頭蓋の中に水銀が詰まっているみたいだった。身体を起こして数分待つ。目を開けると、元通りの光景が広がっていた。  いつもの日常に帰ってこられたらしい。  彼女のことが気になって、電話をかけようとしたが、携帯に連絡先が存在しなかった。彼女の家にも行ってみたが、誰も住んでいない。もぬけの殻だ。この世界から彼女はスッキリいなくなってしまった。  やはりあれはただの夢だったのだろうか。そもそも最初から彼女は存在しなかったのでは……  ジャリ……  足の裏に異変を感じる。足をあげるとリンゴの種をふんずけていた。鮮やかな水色だった。  頭の中の靄がはれた。周囲のどんな異変も見逃すまいと目を凝らす。  もう一度あの異常を見つけてやろう。    そして記憶を保ったまま何度も世界を移動し続けるのだ。またどこかで会うことだってできるだろう。あんなに沢山いたのだから。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加