それって分析ですか?

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それって分析ですか?

 付き合っている彼を、まったくもってダメな男だと決めつけられそうで、反論を試みた。 「でも今は」 「それ、叱られてる?」  ほら、かぶせて否定にかかってきた。そして三度(みたび)顔が近いんですけども。 「もしかしてさ、君の都合が悪くて会えなかったりしてさ、それで不機嫌になってるだけなんじゃないの?」 「うーん」そう言われれば、それは確かにそうかもしれない。 「本気の男ならさ、ときとして叱るのさ。ビシッとね。君を世間の批判の的にしたくないから。君の将来を心配するから。期待するからさ。だから叱ったり、こうあるべきだと要求したりする。あ、もちろん知ってるだろうけど、叱ると怒るは違うからね。叱るはかくあれかし。怒るはその場の(おのれ)の勝手な感情任せ。ここは叱るの話ね」  七夜月は顔の横で、人差し指をちょんちょんと縦振りした。 「セックスの相手だけしてくれればあとはどうでもいい女を、男は叱ったりはしない。それは面倒くさいし、そんなことして生身のダッチワイフが離れていくのはもったいないからね」  生身のダッチワイフとは、なんてひどい表現だろう。けれど時に柔らかく時に鋭い目をして言葉を連ねる七夜月が、悪い男には見えなかった。 c04d5d06-a651-4728-a649-a2c9b3285cc7 「嘘もついたでしょ」 「それはなんとも」 「彼の言動とか誠実さに疑いを持ったことがあるよね」 「それは──うん、あるかな」 「それが嘘さ。疑ったものは嘘さ。女の勘は下手な占い師より確かだ。おごってくれた? 食事とかさ」  思い返してみる。 「最初は、かな」  ほらね。七夜月は再び椅子の背にもたれた。  いや、それは違う。私は彼に負担をかけたくなかった、それだけ。 「それって、釣った魚にエサはやらないってことでまとめたいの?」 「君の態度次第ではときどきエサはやるさ、君が必要なんだからね。性欲処理の相手としてさ」  なんてひどい言葉を投げるの。彼との愛が、ただの性欲処理?
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