第二話 月曜日のマザー

5/9
前へ
/370ページ
次へ
 ボクは、震災後に福島県の沿岸の街から仙台市に避難してきた。あの『三・一一』と呼ばれる大災害だ。仙台で小学生時代を過ごしてきたのだが、今春、お父さんの気紛れで東京に引っ越してきた。  仙台では、同じマンションのフロアの五世帯分を借りて、月曜日から金曜日まで日替わりでお母さんのもとに帰っていた。  五〇一号室がルナさん。  五〇二号室がありすさん。  五〇三号室が真紀さん。  五〇五号室が樹里さん。  五〇六号室が美奈さん。  ……って『子』ついてるお母さん居ないし! 日本人の女子らしい名前はどうしたんだよ。そうそう、五〇四号室はない。四は死の番号なので縁起が悪いそうだ。だけど、四〇一号室とか四階はしっかりあったんだけど。所謂『ゴコイチ』で、ワンフロアに五世帯のマンションだった。  え? 土日? 仙台は近くに温泉街がいくつかあるから、週末はお父さんと温泉宿に泊まっていた。週末親子温泉は、東京に移ってからも変わらないと想う。月曜日の朝はきつい日もあったよ。起きたら一M以上雪が積もってて、車を出せなかったとかね……。月曜日はお父さんが車で小学校まで送ってくれてた。  そんな生活を六年間も、何の疑いもなく続けていたから、変な家庭環境だと知ってボクはショックを隠せない! だってお母さんは五人もいるし、友達の家にお泊りしたこともなかったし。お父さんは超適当だし……。  この女装は計画的だったのかな? 小学校四年から髪を伸ばすように言われたけど、仙台の時は、ちゃんと男の子として通っていた。仙台では、福島からの避難者も居たから、『原発いじめ』に遭ったことはなかった。同じ被災地だし。でも、ここ、帝町では違うらしい。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加