第一話 どうして皆には一人しかお母さんがいないんだろう

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 でもね、中学生ともなると、色んなことに興味が出てくる。ボクは歴史が好きだ。日本の歴史も、アジアの歴史も、西洋の歴史も。かつて大災害に襲われた故郷の街もここ東京の帝町の歴史も。  ただし例外がある。短期間で何人も王が変わったり、落ち着く前に国家の名称が変わったりするような浅すぎる歴史は嫌いだ。覚える価値も、学ぶべき価値も見いだせない。継承者問題で暗殺が実行された西朝鮮。テロやクーデターを繰り返し行う中東の自称国家なんて酷いものだ。  西朝鮮は朝鮮半島の中国側にある国で、朝鮮半島戦争により、韓国から分断された国だ。東経百二十七度線で区切られた独裁国家は、令和時代の今でも、繰り返し弾道ミサイルを発射し、原水爆の実験を行っている。現在の国家主席は、実の兄を暗殺したといわれているが、日本ではあまり報道されなかった。何故なら、暗殺直後に『三・一一』が発生したからだ。  ある年の三月十一日。日本は未曽有の大震災に見舞われた。天罰が下ったと喜び、災害支援もしないアジアの隣国もあった。日本国内でも被災してない偉そうな大人たちは、モニター越しに語っている。 「神は乗り越えられる苦難しか起こさない」  そんなの糞くらえだ。何万人もの人が死んでしまったというのに、何を言っているんだろう。だからボクは、神様を信じないことに決めたんだ。  ボクに記憶がないのは、大震災のトラウマらしい。ともかく、ボクは中学校にあがり、明日から制服であるセーラー服に袖を通すことになる。さようなら、ランドセル。
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