第一話 どうして皆には一人しかお母さんがいないんだろう

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 世界は暗号で満たされている。  目に見えるものが、真実とは限らない。  どうしてボクは、男の子なのに『女の子』の格好をさせられているんだろう。  もう一つの変わったこと。それは、なぜか女の子になってしまったことだ。ボクは男子だ。確かに体つきは小さいし、かわいい顔だと言われるけど。ボクは、セーラー服を着せられ、女子生徒として入学させられた。同小は一人もいないから、担任も含めて誰もボクが男子だって知らない。書類上はどうなっているのか分からないけど。  ねぇ、プールや修学旅行はどうする気? 流石に声変わりや体格の成長は、ごまかせないんじゃないの?  でもお父さんは「大丈夫だ。問題ない」って無責任に言うんだ。 「だって、女はミステリアスな方が魅力的だろ」  すっごいキメ顔してるけど、ボクは男の子だよ……。こんな無責任男のどこが良かったんだろ? お母さん達を小一時間程、問い詰めたい。  でも、お母さん達も皆、お父さんの無茶な提案に反対するどころか、賛成した。しかもノリノリで。喜んで引越しまで済ませたってわけ。  報告。帝都学院中等部の入学式も無事終わった。皆、ボクを女の子だと信じて疑わない。胸がチクチクするし、ドキドキもする。ひっそり暮らすも何も、こんな事がばれたら、それこそニュースで大騒ぎだ。なるべく、みんなと距離を置いて過ごすしかないだろう。多分無理だけど。  ボクの家庭環境が変わっているのはそれだけではない。物心ついた頃から、日替わりで特殊訓練を受けてきた。変なスキルを教わるより、学習塾とか実用的な習い事とかあると想うんだけど。  なのでここからは、非難と皮肉を込めて非日常なボクの日常をお伝えしようと想う。
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