マネキン

1/7
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/14

マネキン

 会社の命令で転勤となり、寂れた街へと引っ越してきたのは、つい先週のことだった。  転勤先に馴染むには色々な人と話をした方がいいと考えた俺は、社員に限らず、パートのおばちゃんやバイトの大学生なんかとも色々な話をしていく内に、『ある噂』を耳にすることとなった。 その噂が事実なのか、嘘なのかを俺は確かめることにした。 理由か? 俺にとってはとても重要なことだからとだけ、お伝えしておこう。  時刻はもうすぐ夜中の2時を迎えようとしている。街灯も(まば)らな闇夜の中、商店街の入り口に俺はいる。  それにしても不気味だ。  商店街の奥を覗くと、等間隔に街灯が設置されているのが(うかが)える。だが、点いたり消えたりしているため、逆に薄暗さを演出していた。 夏とはいえ、この時間ともなると、涼しい。いや、涼しいと表現は間違っているようにも思える。奥からこちら側へと流れてくる風はひんやりとしていて、どこか生暖かい。 「俺は一体何をしてるんだ」  自分に問いかけるように発した俺の言葉は、闇夜へと消えていった。  大学生から聞いた話によると、深夜2時になるとアーチ看板に明かりが灯るらしい。  あと、10秒だ。  今年で40歳となった俺が、今更学生のようなことをするなんて、人生なんてわからないものだ。 それでも、どうしても確かめておかなければならない。おばちゃん達が噂していたあの話が本当かどうかを。
/14

最初のコメントを投稿しよう!