転生者選別室

13/13
223人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
 選別室から出ると、俺はヴェーラに先導されて検査室までの道を歩かされた。  先導されるといっても手を縛られた状態で、散歩に行きたくない犬のように縄のリードで無理矢理引っ張られているだけだ。  しかも、脱走されることを想定しているのか、目隠しまでされた。 「規則だ」  選別室を出る前、ヴェーラは確かにそう言っていた。  しかし、裸の男が手を縛られて、おまけに目隠しまでされて縄で引っ張られているというこの状況。  冷静に考えると、(くせ)の強い大人の店の光景と変わらないだろう。 「な、何だ!? 転生者か!?」 「あらあら」 「キャッ!」 「ハハッ! 見ろよアイツ!」 「ほほう……」  途中ですれ違ったであろう人たちの声が次々と俺の耳に入ってくる。  恥ずかしいなんてものじゃない。  目隠しされていても、みるみる自分の顔が赤くなっていくのが分かる。  特殊(とくしゅ)(へき)の人間なら間違いなく歓喜しているだろうが、俺は違う。  誰かとすれ違うたびにヴェーラは無言のままグイッと引っ張る。  たぶん、早く検査室まで連れて行きたいのかもしれない。  でも、早く移動する度に前を隠している布が離れそうになって焦ってしまう。 「止まれ」  俺は急にそう言われ、足の動きを止めた。  ようやく検査室に着いたのか。  実際は数分という時間しかたってないと思うが、羞恥心のせいでかなり長い間歩かされていた気がする。  扉をノックする音が聞こえた後に、その中から「どうぞー」という軽い返事が返ってきた。  また縄でグイッと引っ張られると、そこで俺の目隠しはようやく外された。  思っていたより広い……学校の教室2つ分くらいの広さはありそうだ。  ここが検査室か。  理科準備室にあるような液体が入ったビンや、ホルマリンに浸かった生物のような物が奥の壁際の棚にギッシリと詰まっている。  その外には何に使うのか分からない尖った器具、天秤のような物、何かを蒸留するような装置などが(いく)つかあるテーブルの上に無造作に置いてある。  そのテーブルの1つには、椅子にお尻を乗せながらテーブルの上で足をクロスしてるいる褐色肌(かっしょくはだ)の女がいた。  でもその女は自分の太ももの上に分厚い本を広げて読んでいて、こちらを見ていない。  壁際には本棚を整理している真面目そうな男の姿が目に入った。  ピンと背筋を伸ばしてテキパキと仕事をしているその姿は、少し神経質な印象を受ける。  余程(よほど)集中しているせいか、男もこちらを見ていない。 「転生者を連れてきた」  ヴェーラのその言葉に気付き男はこちらを向くと、俺の姿を見るなり口を開いたまま絶句した。  当然の反応だろう。  手にしていた本も床に落としている。 「ちょっと待ってねー」  褐色肌(かっしょくはだ)の女は(しおり)を本に(はさ)むと、テーブルの上に置いてあるコップを口に運びながら本を閉じた。 「なんだヴェーラじゃん……んんっ!?」  女は俺を見るなり、口を付けていたコップから水を噴き出した。 「ヴェーラ、アンタそんな趣味あったの!?」  女は口からダラダラと水を垂らしながら、驚愕の表情で俺とヴェーラを交互に見つめていた。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!