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「……ぷっ……ふふふ」
笑いが抑えられない。今日中にしておきたい仕事が優先されたはずなのに、俺が声を掛けたら天王寺は全部放り出して、一瞬で俺を選んだ。
しかも、大嫌いな浅見への言付けを預かり、おそらくそれを伝えなければ、明日天王寺からどう思われるかも分かる。だから桜井は浅見が戻るまでは帰れず、伝言も伝えなければならない。
驚きと嫌悪感と唖然が入り交じったようなあの桜井の表情は、本当に見ものだった、これが笑わずにはいられず、俺は一人笑いが止まらなかった。
「何がおかしいのだ姫」
「……ははは……、内緒」
「私は知りたいのだが……。教えてはくれまいか」
久しぶりにお腹から笑った俺は、重大なことを1つ思い出した……宿題。もともと背伸びして入った学校の課題は想像をはるかに超えて難しかった。で、
「天王寺、教えてほしいところがあるんだけど……」
「姫の頼みなら何なりと」
快く引き受けてくれる天王寺は見た目通り頭がいいのはもちろん、教え方も上手い。俺と天王寺はその足で図書館へと足を運んだ。
入学早々いろいろあったが、結果的に俺と天王寺、火月に水月、そして浅見は驚くほど仲良くなり楽しく学校生活を過ごす。相変わらずなのは桜井だ。たまに会えば嫌味の1つでも言って行くが、俺には負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
お昼――いつものあいつがいつもの台詞でやってくる。
「姫はいるか?」
そして、俺は……
「人前で姫って呼ぶな~~~」
の、決め台詞でお昼を迎える。
俺と天王寺が手を繋ぐまでになったかどうか、それはまた別のお話。
◆◆おわり◆◆
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