6話

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「今は友達。絶対友達だ」 「今とは、この先恋人になれるということか?」 「……あっ、いや、そういう意味じゃなくて……」 自分で墓穴を掘ってしまった、……しかも、天王寺の奴はもう聞く耳なし状態で俺に抱きついてくるし。ついでに今度はうれし泣きしてるし。 「姫に相応しい者になれるよう、私は頑張らなくてはならないな」 「だから、そういうことじゃなくて、俺が言いたいのは……」 「本日からまたお菓子を食べに来てくれるか?」 有頂天になった天王寺は、人の話なんて聞かずどんどん話を進める。俺の言いたい『友達』の趣旨をまったく理解されないまま天王寺はとびきりの笑顔を俺に向けてくる。 「姫、本日は何を口にしたい。お茶も好きなものがあればすぐに用意させる。姫は何が好きなのだ」 ダメだ~~、今のこいつにはきっと何を言っても理解してもらえそうにない。やっぱ、日を改めて落ち着いたらゆっくり話そう。俺がそうこう悩んでいるうちに、またまた余計な問題にぶち当たってしまった。 「姫、どうかしたのか? もしやどこか体調が優れないところでもあるのか?」 先ほどから何もしゃべらなくなった俺に、天王寺が心配して声をかけたが、新たに見つけてしまった悩みの種をここで言うべきか俺はまたまた悩み中だった。 「姫、どうしたのだ……姫。医者を呼んだほうが良いか姫」 だ・か・らぁ~、さっきから姫、姫って俺は男だ。 「姫って呼ぶな~~~」 「……姫?」 「俺は姫木、姫木陸なんだから、名字か名前で呼べ」 ――言った。俺の願いは聞き入れてもらえたのか、天王寺は短くすまないと謝り、 「……陸」 真顔で名字を呼んだ。天王寺に初めて呼ばれた名前……、ドキッと胸が鳴り、鼓動が早くなる。なんで、ただ名前を呼ばれただけなのに。天王寺に姫と呼ばれることがごく普通になりすぎていた為に、いきなり違った名前で呼ばれたことに戸惑いを覚えた。心臓に悪い。 ドクドクと鼓動が速くなり、視点が歪み、胸の高鳴りが飛び出しそうなほど煩い。 ど、どうしよう、天王寺に名前で呼ばれるとなんでこんなにドキドキするんだ。これってなんだか恋みたい……、って、何考えてんだ俺。
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