地球の代表

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地球の代表

そのロケットは銀河系の星の海をゆっくりと漂っていた。 ロケットに乗っているのはN星の住民で構成された宇宙調査隊の若者たち。 彼らの母星であるN星は人口の増加により、 もう住める場所に限りが出てきた。 そこで新たな生活出来る星を探すため、遥々この 銀河系へやってきたのだ。 「次の調査対象である惑星の名前は?」 その宇宙調査隊の隊長である初老の男が部下に対して尋ねた。 「はい、次の調査惑星は地球という星であります。」 「地球か。その星の支配者はどんな生物なのだ?」 隊長の問いに部下は資料を見ながら答えた。 「人間、という二足歩行で歩く生物が今の地球の 支配者的立ち位置のようですね。」 「ほう、それは興味深い。 どれ、そのニンゲンという生物を一体、今すぐこの宇宙船へ連れてきてくれ。」 「承知致しました!」 部下の隊員達は元気よく返事をすると、小型機に乗り込み、地球へ飛び立っていった。 隊長はその間、地球についてのデータに目を通す。 地球には様々な食べ物、テレビなどのエンターテイメント文化が存在すると書いてある。 なかなか面白い星ではないか。 そして数分後。 一体捕獲し、無事に母船へ帰還した。 自動言語翻訳装置を使い、ニンゲンとの意思の疎通を試みる。 「あー、聞こえるか?お前の名前を教えてくれ。」 隊長が翻訳機を通して話しかける。 「あ、はい。聞こえますだ。 オラを連れてきて、何の用ですかい?」 返事が返ってきた。 意思疎通成功だ。 「私達は見ての通り地球を調査しにきた者だ。 君をとって食おうというわけじゃない。 質問に少し答えてもらいたいんだ。いいかな?」 隊長の問いに人間はうなづく。 「うむ、よろしい。 では、今の君たちの種族の暮らしについてじっくり聞かせてくれ。」 「オラ達の暮らしですか?」 「うむ、そうだ。 君たちがどう暮らしているのか、実に興味があるんだよ。」 ……彼らがもし穏やかな種族なら共存という選択肢も可能だろう。だがもし野蛮な一族であるのなら。 …その時は滅ぼさなくてはならない。 そんな物騒な考えを隊長が抱いているとも知らず、彼は語り出した。 「オラ達は集団で生活しています。 周りを壁で囲まれた大きな部屋で暮らしており、 私達の面倒は1人のご主人様が見てくださいます。」 「ふむふむ、なるほど。」 聞くところによると、この者は相当身分が低く、 壁に囲まれた大きな部屋に毎日監禁されて過ごしてきたみたいだな。これが地球でいうという文化なのだろう。全く、愚かだな、人間。 「オラ達は一度も外の世界を見た事はありません。 いつも鉄の檻の中。時々檻の外側からご主人様が 沢山のお仲間をお連れになり、じっとこちらを見つめなさる時もあります。」 …なるほど。彼らのご主人様、つまり貴族が他の貴族仲間に自分の奴隷を見せびらかしているのだろう。データで見ても、話に聞いても、全く。 なんて野蛮なのだろう。ニンゲン全てがではない。 悪いのはこの貴族という身分の奴らだ。 許せぬ。 「もうよい、ありがとう。 君の訴えは全て聞いた。 今すぐ地球にいるニンゲンの貴族を滅ぼそう。 それで君たちが救われるはずだ。」 そう隊長は彼にいうと部下に命じた。 「彼の仲間が囚われている施設を襲撃し、仲間を救出、そして他の奴らは皆殺しにするんだ。」 そういうと、部下達はレーザーガンを持って小型機に乗り込むと地球へ飛び立っていった。 残された隊長と彼。 隊長は必死で彼を励ます。 「もう大丈夫だ。 君の仲間は救出し、貴族どもは皆殺しにする。 これで君は救われるはずだ。」 しかし、励まされた側の彼の対応は隊長の予想とは異なっていた。 「貴族?一体何を勘違いなされてるんです? オラ達はただの動物園に住んでるサルですよ? ご主人様である飼育員達を皆殺しにするですって? そんな事をしたら一体誰が私達の面倒をみるのですか。勝手なことをしないでください…! もしもし!?聞いてますか……」
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